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『原神』はなぜ面白いのか。結果ではなく過程を愉しみ共有する新しいソーシャルゲーム |

Mine Sasaki

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ゲーム界に彗星のごとく現れた3Dアクションアドベンチャー『原神』。現在すでに全世界1000万ダウンロードを達成し、人気を博している本作ではあるが、誕生以前からとある話題で持ちきりであった。それは特定層を狙い撃ちするアニメ風ビジュアルでありながら、業界を席巻した名作『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』の明確なフォロワーであると認識されたことだ。さて蓋を開けてみれば、ただのフォロワーでは終わらなかった。

まずゲームの要素を見ていこう。基本的なゲームシステムはモバイル向けのソーシャルゲームで一般的な、複数アイテムを合成することでキャラクターを強化していくシンプルな方式であり、マネタイズは基本、そのゲームシステムに合わせて利益の出しやすいガチャで行う。戦闘アクションは開発元miHoYoの自社タイトルである『崩壊3rd』の技術を基盤に、簡単な入力で爽快感が得られる『ニーア オートマタ』などを組み合わせて作られていることが見て取れる。『フォートナイト』を筆頭に近年対応タイトルが増えてきたクラスプラットフォームプレイを導入することで参入間口を低くし、バトルパスで継続的なプレイを誘導する。昨今のトレンドを詰めに詰め込むことで生まれたその姿は、現代におけるゲーム作品のあり方として、間違いなく先をいくものの一つでもあるし、安易な融合の末に生まれた、作品意図の読めないキメラの様にも思える。

通常、筆者はこうした「企業利益を先行している様に見える、快楽優先の独自性の見えない作品」というのは嫌いなのだが、興味半分で触れた結果、見事心を掴まれてしまった。そして不思議なことに、本作は最先端のゲームのうちの一つではあるが、覚えたものはある種、ノスタルジーに近いものだった。これは決して私が『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』『ニーア オートマタ、『フォートナイト』を既に遊んでいることに由来するものではない。私がより幼かった頃。ただただコンテンツに驚き感動していた頃の思い出に触れるものがあったからである。本稿は話題作としてようやく産声を上げた『原神』。一見継ぎ接ぎだらけのような姿をした彼の心臓の在り処を明らかにし、その構造を解きほぐすものである。

アニメの世界で冒険がしたい

「アニメの世界で冒険がしたい」。私が中学生の頃、主に授業中描いた夢だ。そこには中世風の町並みがあり、五行を元にした属性の法則が成立している。ゴブリン、妖精、スライム、魔導兵器、そしてドラゴン。剣と魔法の世界。『原神』は主にファンタジーを題材にしたアニメやライトノベルで育った人間に対し、五感を通して強烈なノスタルジアを吹き込む。「アニメ調の世界で、アニメ調のキャラクターを存分に動かす」という、私のような――『.hack』シリーズや「ソードアート・オンライン」などを楽しんできたような――ヲタクが一度は観たであろう夢の実現を核とし、すべてが組み上がっている作品である。トレンドのパッチワークという安易な評価に収まるゲームでは決してない。

まずは悲願を達成する上で肝心要となるキャラモデルに関してだが、完成度は非常に高い。現在フリーダウンロードできるキャラモデルを観察してみると、モバイルからコンソール、PCという幅広いプラットフォームに耐えうる仕様となっていることがよく分かる。ポリゴン数を抑えつつさまざまな設定のレンダリングに対応できるモデリングが成されている。上位機種ではより美しく、下位機種で動かしても違和感が生まれないための技術が注ぎ込まれている。キャラクター自身に関しても設定は練り込まれており、用意された膨大なテキストが彼/彼女らを人形ではなく生きた人間として形作っている。本作にはフォトモードも備わっており、美麗な世界の中で美しいキャラクターを撮影、シェアすることが可能。そうでなくとも元がアニメ絵であるため、イラストレーターたちが自主的に二次創作を拡散し、自然とファンコミュニティの醸成や宣伝効果が見込めるようになっている。

抽象化されたオープンエアー

役者の次に必要となるのは、演技を披露するための舞台である。監督であるmiHoYoはこの精巧なキャラモデルを動かすために、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』における「オープンエアー」を作品の一部として取り込むことを選んだ。

「オープンエアー」とは、Nintendo of Americaのシニア・プロダクト・マーケティング・マネージャーを務めるビル・トリネン氏曰く「探検要素や冒険とが完全に融合している世界」を生み出すための開発コンセプトであり、すべてのフィールドを移動可能としつつ、アクションの方向性が異なる選択肢を逐次豊富に提示することを特徴とする。たとえば目的地へのルート構築ひとつとっても、山を登るか、戦闘をこなすか、泳ぐか、ステルスするかという選択肢をプレイの進行と同時に絶えず提示していく。選択の合間には探索=アクションを快適にするオブジェクトをプレイヤーの視界に挿入し、さらなるアクションを訴求する。これを限りなく恣意性を排除した形で成立させる。つまりキャラクターをプレイヤーの意思で常に動かし続けさせるためのデザイン方式と言え、本作の目標を達成するための手段としては非常に理にかなったものだ。『原神』はこのオープンエアーシステムをうまく抽象化し、モバイルでもPCでも満足に遊べる内容へと落とし込むことに成功した。

『原神』の世界においてオープンエアーを通じた冒険という行為は「移動」「発見」「戦い」の3要素へと噛み砕かれ、旅の道中に提示される「道なりに進む」「崖登りと空中飛行」「ザコとの戦闘」という3つの選択肢として反映されている。それぞれは「制作素材」「ランドマーク」「宝箱」というインセンティブを伴い、3つは「像のアップグレード素材」や「謎解きギミック」など興味関心を促す仕掛けを通じてシームレスに接続している。祠の代替となるダンジョンに関しては、通常のフィールド上では味わえない高度な戦闘と、独自の謎解きを提供することで、普段とは地続きでありながら切り離された体験を演出している。

なかでも『原神』における戦闘は、アクションがもたらす爽快感や、プレイヤーが習得するテクニックそれ自体に面白さを見出すというよりかは、キャラクターそのものにフォーカスし、彼らが持つ属性同士の相性や、アビリティの連続発動タイミングの調整、キャラ性能を活かしたビルドの構築など、複数人を使い分け組み合わせるソ―シャルゲームベースのメタゲームを中心に面白さを演出している。つまりアクションそれ自体が不慣れなプレイヤーや操作環境が特殊なモバイル機でも平等に愉しみを享受できるように設計されているのである。

だが見て分かる華やかさをおざなりすることはなく、アビリティ発動の際に発生する派手なエフェクトや大振りなモーションが導入されている。敵の色合いが地味なことや、姿のバリエーションが少ないこともこれを助けている。中でも最高レアリティに該当するキャラクターには独自の演出や専用モーション(戦いに関係ないものを含め)が実装されており、戦闘力だけでなくキャラそのものをゲーム内における価値としていることがよく分かる。クロスプラットフォームとしたことも、参入間口を広げるだけではなく、プラットフォームごとの性能に由来する画質の差によって「もっと綺麗で広大な世界を味わいたい」という欲求を喚起し、プレイヤーに複数のプラットフォームにまたがったプレイを訴求する。結果として『原神』に触れる時間は増加していく。

本作は基本プレイ無料の長期運営型ゲームサービスの方式を採用しており、プレイヤーのプレイスピードをコントロールするため、時間経過でアイテムが入手できるシステムや、俗に言う「スタミナ」の概念を導入している。だがスタミナシステムにより制限されるのはダンジョン攻略や強敵の討伐とったキャラクターの強化にまつわる部分に限られており、世界散策やストーリークエストなど、移動を主体とするアクションにはあえて枷をはめていない。だが本作のメインであるストーリーを進行させるためには、散策やお使い型のサブクエストで得られる経験値が必須となる。すなわち、プレイヤーには強化のためにある作業よりも、移動、すなわちキャラクターの操作を楽しんでほしいという意図が読み取れる。またマルチプレイが本作には実装されているが、これに関してもあくまで自身の成長をブーストさせるものではなく、他プレイヤーを助けることそれ自体を楽しむため設計されている。

つまるところ『原神』は「アニメキャラクターを存分に動かす」という理念のため、「冒険」というテーマを設定し、広大な箱庭を設け、オープンエアーシステムを取り込んだ。それでいて参入間口を広げるべく、手触りに関してはスマートフォンで遊ぶソーシャルゲームをベースにした、柔らかくも歯ごたえある手応えを持った内容を構築している。たしかにリリースからまだ数週間ということもあってか、用意されたコンテンツの量に物足りなさを覚える場面は多い。だがそれ以上に、開発陣が持つ、規模の異なる複数の優秀なゲームシステムをさまざまなプラットフォームでのプレイに耐えうるよう落とし込む技術には、ログインを重ねるたびに感嘆してしまう。

加えて、国内アニメ風のビジュアルでオープンワールドを導入している作品はそれこそリスペクト元である『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』や『ニーア オートマタ』、『夏色ハイスクル☆青春白書』など、実在する例として上げるには数がまだまだ少ないのが現状である。こうしてさまざまな層が手軽に遊べるアニメ・オープンワールドが海外から登場し人気を博しているという事実は、海外産の時代劇オープンワールド作品である『ゴースト・オブ・ツシマ』のリリース時同様、今後のゲーム業界に一石を投じることになるだろう。

結果ではなく過程を重視するゲームサービスが誕生する意義

ここまで説明してきたとおり、『原神』の心臓は「アニメキャラクターを存分に動かす」ことにあったわけだが、よくよく考えると、その心臓の構造自体が異質であることに気づく。前提として、『原神』はスマートフォンで遊ぶソーシャルゲームをベースとして作られていることは先述したとおりだ。だが多くの場合、そうしたゲームはプレイの後にもたらされる「結果」を面白さの最上位に位置付けるものである。課題を達成することはもちろん、経験値や強化のために必要となるアイテムなど。昨今ではいち早く結果をプレイヤーに与え、SNS上で共有させるため、プレイの過程そのものをカットするシステムを設けたり、プレイしなくてもゲームが進行する「放置型」と呼ばれるような作品が多く登場することになった。そうした潮流の中で、こうしたキャラを動かす=「過程そのもの」に価値を見出すことをメインに要求するソーシャルゲームが登場し人気を博していることは異常事態であると言える。

以前私が執筆した『あつまれ どうぶつの森』に関するコラムにも記述したが、コロナウイルスのパンデミックによって日常が変わってしまった昨今。人々が求めているのは「ふつう」を基準とした幸不幸の格差ではなく、「ふつう」そのもの。病魔の及ばない世界の中で「日常だったもの」をシミュレートすることで生まれる、社会の構成員であるという自認に由来する安心感ではないだろうか。つまり、「ルーティンの共有」である。だがルーティンの中身は作業であってはならない。私達の生活がその実、発見に満ち溢れていたように、シミュレーションの中身も、ワクワクとドキドキを含んだ内容となければならない。ゆえに、そうした「ルーティンの共有」をシステムとして実装した『あつまれ どうぶつの森』は大ヒットを記録し、『フォートナイト』を筆頭に、メタバースへの関心が世界で高まっている。

そうした状況の中で、狙ってか知らずか『原神』の仕様は非常に噛み合ったものであった。法が敷かれた安全な世界の中で、キャラクターという仮想身体を通じ、共通の目標を達成するマルチプレイ。中でもキャラクター間の連携を重視する戦闘システムはコミュニケーションとの親和性が非常に高い。SNS上にばら撒かれるテイワットを写したスクリーンショットは「私達は同じ世界の中にいる」という認識をもたせ、ガチャのシステムは社会からこぼれ落ちてしまうのではという焦燥を駆り立てる。そうした「秩序立った世界」へスマートフォンから、PCから、コンソール機からアクセスできる。

以下は私の推測になるが、今後この「過程を共有する」という、ある意味プラットフォーム化と呼べるような仕様はソーシャルゲームの新たなトレンドとなるだろう。「自分が何を成し遂げたか」、ではなく「誰と何をしている」か、を重視する潮流がソーシャルゲームにも流れ込むことになる。この流れの前身として、作品知識と「リアルタイムイベント」からくる一体感を共有することを旨とした『Fate/Grand Order』や、『メギド72』『SINoALICE ーシノアリスー』などが存在するが、『原神』以降求められるのは情報と、現実を舞台に、集団で仮想に浸る快楽の共有ではなく、仮想から現実を集団で感じ取る方向に向かうのではないだろうか。

だが同時に、プラットフォーム化は危険性を孕んだ仕様であることも私達は認識しなければならない。プラットフォーム化されたゲームを遊ぶということはつまり、運営が敷いた法が支配する世界の訪問者となるということ。解像度を落とした治外法権の中に居るということだ。たとえば『原神』の運営元miHoYoを含む中国企業のゲームを遊ぶ場合には、現地特有の規則を遵守しなくてはならない。ゲームではないが、FacebookがOculusを買収した結果、ハードを起動するにはFacebookアカウントを必ず紐付けなければならなくなった。AppleとEpic Gamesの対立は皆のよく知るところだろう。プラットフォームを利用することはつまり、異文化を訪れ折り合いをつけることと同じなのだ。私達はPCから、コンソール機から、そしてスマートフォンから、気軽に外国へ飛び立てる。ゲームソフトがフィクションである時代は終わった。

格差ではなくプロセスの共有を旨とする黒船の登場はソーシャルゲームビジネスそのものを変革しうる存在となるのだろうか。そしてそのまま日本のゲーム業界はプラットフォーム化されたゲームをとおして台頭する諸外国に飲み込まれてしまうのか。『原神』の今後に目が離せない。




著者: ” — automaton-media.com

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【ACADEMY】「もっとうまくできる。オープンワールドを再評価するときがきた」 –

Mine Sasaki

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Ubisoft ReflectionsのChris Jenner氏は,Develop:Brightonの講演で,世界規模の創発的なゲームプレイを実現する方法を提案した。

 Assassin’s Creed ValhallaからCyberpunk 2077まで,オープンワールドゲームはますます大規模化,複雑化しており,デベロッパはプレイヤーのためにアクティビティや魅力的なイベントを提供するために,より多くの時間とリソースを費やしている。

 しかし,Ubisoft ReflectionsのプログラマであるChris Jenner氏が先日行われたDevelop:Brightonの講演で述べたように,多くのプレイヤーはいまだに世界とその世界での交流が空虚に感じられると不満を抱いている。

 「最近のアクションゲームは,ワールド内の場所とプレイヤーのインタラクションを複雑かつ詳細に表現することに長けています」と氏は語る。「しかし,プレイヤーがある場所から別の場所へと移動すると,この深みは消えてしまうでしょう。新しいロケーションは手つかずのままで,どこかに戻るということは,それまでのアクションの影響が,まるで何もなかったかのように取り除かれていることを意味しています」

Chris Jenner氏, Ubisoft Reflections

 「プレイヤーを世界を突き動かすストーリーは直線的な物語になりがちで,プレイヤーは特定のアクションを実行することで物語を進める機会を見つけるために世界を移動する必要があります。当然のことながら,これらのインタラクションは事前に計画されたものであり,多くの台本があり,数も限られていることを意味しています」

 この種のゲームの多くは,リプレイ可能なチャレンジやサイドクエスト,ランダムイベントなどを追加して世界を空虚に感じさせないようにしているが,これらはメインストーリーとは無関係であることが多く,不必要に感じることがあると語る。

 「新しい家庭用ゲーム機世代に移行し,クラウドコンピューティングの力を利用し始めた今こそ,オープンワールドゲームを再評価するときです」と氏は語る。「我々は,プレイヤーの行動に応じて変化する世界を作ることができます。世界そのものをゲームプレイ体験の重要な一部にする必要があるのです」

エマージェントゲームプレイの重要性

 エマージェント(創発的な)ゲームプレイは,「多くのゲームのサンドボックスのような感覚に欠かせません。そこで起こる出来事はプレイヤーの行動に基づいているため,それぞれのプレイヤーの経験に固有のものとなるのです」と Jenner 氏は語る。

次世代のゲーム機に移行し,クラウドの処理能力が高まるにつれ,大規模な世界とのより深いインタラクションを可能にするときがきています

 具体的には,プレイヤーの行動だけでなく,他の派閥のNPCや野生動物,さらには火事にまで反応するNPCを例に挙げている。これは「初期状態のわずかな変化が劇的に異なる結果をもたらすという,真にカオスな効果をもたらします」と氏は語る。

 エマージェントゲームプレイには,また違った味わいがある。Jenner氏は,オープンワールドアクションゲームのデベロッパが利用すべきものとして,Civilizationのような大規模な戦略ゲームがあると語る。

 このようなタイトルでは,プレイヤーとAIの両方の行動に基づいて,時間の経過とともにワールド全体が変化し,それは計画的に行われる必要がある。オープンワールドゲームは分刻みのゲームプレイが中心になりがちだが,このようなタイトルでは数時間にわたってユニークな体験をできる。プレイヤーは,試合のずっとあとにならないと効果が出ない行動を考えなければならないことがよくある。

 「ゲームの中では,静的な存在と動的な存在の組み合わせが複雑に絡み合っているため,それぞれのゲームが異なる点があり,予測するのが難しいのです」とJenner氏は語る。

Far Cryに登場するNPCは,プレイヤーの行動,環境,火事,野生動物などにリアルタイムで反応する必要がある
【ACADEMY】「もっとうまくできる。オープンワールドを再評価するときがきた」

 「戦略ゲームやシミュレーションゲームは,より長い時間をかけて行動に持続性を持たせ,高度な計画を持ってNPCの行動を指示することで,世界のシステムから新たなゲーム性が生まれることを示しています。オープンワールドゲームの中で同様のシステムを実現できれば,プレイヤーの行動に合わせて変化し,適応する世界を手に入れることができ,プレイヤーは世界に入るたびに新たな挑戦と機会を得ることができるでしょう」

 Jenner氏の提案は,プレイヤーのためのローカルな創発的ゲームプレイを生み出す小規模なシミュレーションを,より大きな世界規模のシミュレーションに結びつけて,アクションが持続するようにするというものだ。たとえば,プレイヤーが以前に訪れたことのあるエリアに戻ると,最後にそこに行ったときのことが反映される。

 しかし,これはどのようにすれば実現できるのだろうか? Jenner氏は,オープンワールドアクションゲームと大規模ストラテジーゲームのシミュレーションに求められる要件の違いを比較している。

オープンワールドゲーム

 Jenner氏は,小規模なオープンワールドを,プレイヤーが複数のNPCと対話して,自分の行動に反応したり,お互いに反応したりするような,より狭いエリアに限定されたオープンワールドと定義した。

戦略ゲームやシミュレーションゲームでは,アクションに持続性を持たせて,より長い時間をかけて世界システムを構築していくことで,新たなゲーム性が生まれてくることを示しています

 このような世界では,結果がプレイヤーに直接見えるため,シミュレーションは応答性と正確さが求められる。このようなケースでは,ダイナミックで予測不可能な環境を作り出すために協力して働く異なるゲームシステムから生まれたゲームプレイが存在する。しかし,システムの数が多ければ多いほど,各システムは常に進化する必要があるため,世界はより複雑になる。

 たとえば,AIは周囲の世界を理解し,プレイヤーや他のAI,世界の静的なオブジェクトの行動によって,次に何をすべきかを決定する必要がある。AIはアニメーションを駆動し,現在のアニメーションの状態をAIにフィードバックして,どのようなアクションやアニメーションが可能かを制御する。物理システムはアニメーションとAIにフィードバックし,キャラクターが静的な世界に侵入するのを防ぎ,レイキャストを実行して現在表示されている要素を判断する。他のシステムはこれらと並行して動作し,それらと相互にフィードする。

 このシミュレーションは,各システムがリアルタイムで更新しなければならないため,CPU使用量の点でコストがかかる。このコストは,プレイ中のエンティティの数が増えるにつれて増加し,特定のエリアでアクティブなオブジェクトの数が制限される。

 また,これにより,ワールド全体のデータを一度にロードすることが不可能になり,デベロッパはプレイヤーのすぐ近くのエリアのデータのみをロードすることになる。Jenner氏が「シミュレーションバブル」と呼ぶものを作成し,プレイヤーの周りにキャラクターを出現させ,プレイヤーが離れるとキャラクターを削除するのだ。

 つまり,シミュレーションバブルの中でのアクションは「本当の意味を持たない」ということであり,プレイヤーが去ってNPCが削除されると,そのアクションの効果も削除され,世界はデフォルトの状態にリセットされる。背景のキャラクターも,一般的にはプレイヤーのために世界を埋める以外には何の役にも立たない。

Civilizationのようなストラテジーゲームは,時間の経過とともに変化する世界全体をシミュレートすることで,新たなゲーム性を提供している
【ACADEMY】「もっとうまくできる。オープンワールドを再評価するときがきた」

大規模シミュレーション

 一方,戦略ゲームやシミュレーションゲームでは,多くの場合,1つのマップ上に世界全体が表示される。農場では食料を生産し,兵士では限られた行動しかできないなど,個々のユニットは非常にシンプルなものであることが多いだが,ゲーム全体としてはより複雑なものになっている。

プレイヤーがいなくても環境が変化していく,共有された進化した世界でのプレイヤー同士の交流の可能性は無限大だと思います

 さらに重要なのは,大量のユニットとその行動の持続性で,同じように2つの試合が展開されることはない。一方が優位に立つことで,世界の状況や様子が大きく変化することもある。対戦相手が複雑な計画を持っていることで,これまでとは違った創発的なゲーム性が生まれていく。

 「プレイヤーは,パワーバランスの変化に伴って新たな脅威が出現したり,古い脅威が消滅したりすることに対応して,絶えず計画を変更し,適応させなければなりません」

 しかし,このような世界の変化はアクションゲームに比べて頻繁ではなく,多くの場合,ターン制のシステムがトリガーとなっている。プレイヤーやAIが命令を出すと,ゲームのルールに従ってイベントが進行する。

 このタイプのゲームのデベロッパにとっての主な複雑さは,AIが挑戦的な相手を提供するのに十分な強さを確保することだ。AIは,理論的にはゲームに勝つために,大量のユニットのセットに対して最適な命令を選択する必要がある。

オープンワールドに大規模シミュレーションをもたらす

 Jenner氏は,Civilizationのようなストラテジーゲームや他のジャンルの技術をオープンワールドタイトルでプレイヤーのアクションに意味と持続性を持たせるためにどのように利用できるかについて,いくつかの提案を行った。

 重要な要素は,より多くのエンティティを追跡するためにCPU使用コストを削減すること,あるいは少なくともそのコストを大幅に増加させない方法で行うことだ。NPCなどのプレイヤーには見えないエンティティを削除するのではなく,よりシンプルなシミュレーションモデルをバックグラウンドで走らせてはどうかという提案もあった。

オープンワールドゲームは通常,複数のシステムを同時に実行するために,1つの都市のような小さなエリアに限定されている
【ACADEMY】「もっとうまくできる。オープンワールドを再評価するときがきた」

 「(NPCの背後にある)システムを制御するためのアニメーションや物理学,複雑なAIを削除できます」とJenner氏は語る。「キャラクターの位置,インベントリ,外観などの高レベルの状態を記述したデータセットを保持し,そのデータを単純化したコードセットで操作する必要があります」

 一方で,プレイヤーと環境との間の相互作用は,複雑なシミュレーションではなく,シンプルな論理的ルールのセットで記述できる。Jenner氏は次のように付け加えている:「これはCPUとデータのボトルネックを解決するのに大きく貢献します」

 さらに,バックグラウンドで動作している低LODのNPCは,プレイヤーの近くにいる高LODのNPCに比べて,更新頻度が低くなると語る。ゲームとシミュレーションされるワールドシステムに応じて,これらのNPCは,画面上にいないときには1つの低LODエンティティに統合することもできる。Jenner氏は,戦略ゲームの軍事ユニットの例として,高LOD時には数人の兵士として描かれるが,低LOD時には,その中に何人の兵士が含まれているかを記録する1つのオブジェクトとして描かれることを挙げた。

静的なデータセットで動的な世界を記述することで,シミュレーションを完全に回避する方法があります

 「動的な世界を静的なデータセットで記述することで,シミュレーションを完全に回避する方法があります」とJenner氏は続ける。

 氏はReflectionsの2011年のタイトル Driver: San Francisco(2011年)で使われていた技術に言及した。何千台もの車が,互いに衝突しないようにあらかじめ計画されたルートをたどっていく。車がプレイヤーの近くにいると,決定論的な経路をたどる本物の車が生成される。プレイヤーが遠くにいるときは,このデータに触れる必要はないが,時間が経過しているため,車は動き回っていた。

 これはCPU使用量の点で非常に安価であることが証明された。AIや衝突検知,車両シミュレーションコードを必要とせずに,何千台もの車両を動かすことができたのだ。

 「このアプローチをインタラクティブな世界のシミュレーションに適用する場合の問題点は,決定論的なエンティティが何にも反応できないことです」とJenner氏は認めている。「それらの動きは,ゲームが始まる前に計画されています」

 Driver: San Franciscoで,Reflectionsは,決定論的な車両を削除し,必要に応じてより伝統的なAI制御の車両に置き換えることで,この問題に対処した。これにより,基本的には,NPCはバックグラウンドで動作しているが,プレイヤーの行動に応じて更新される半決定論的なシミュレーションが実現した。

 「プレイヤーが近くで銃撃戦に巻き込まれ,NPCが高LODに昇格するほど近くにいなかった場合,そのエリアにいるすべてのNPCにメッセージを送り,新しい情報に反応して決定論的なAIの状態を更新するチャンスを与えることができました」とJenner氏は説明する。「それによってNPCの行動が変化した場合,彼らは新たな決定論的経路を計算して,異なるターゲットロケーションに移動を開始できます」

 「このアプローチは,更新頻度の削減の極端な例です。各更新にはコストがかかりますが,エンティティが実行したい行動を決定論的に再生するので,一度に数分間はそのままにしておくことができます」

Driver: San Franciscoは,マップ全体の周りに配置された詳細度の低いNPC車両のシミュレーションを続け,プレイヤーのアクションに基づいてパスを更新した
【ACADEMY】「もっとうまくできる。オープンワールドを再評価するときがきた」

クラウドで動く世界

 Jenner氏は,オープンワールドアクションに大規模シミュレーションを追加するには,より多くの処理能力が必要であることを認めている。半決定論的なデータセットは頻繁に変化するので,低帯域幅の接続で何千ものエンティティの正確なシミュレーション情報を提供できる。

プレイヤーの行動に応じて変化するワールドを作ることができます。世界そのものをゲームプレイの重要な一部にするべきです

 「クラウドは,低LODの大規模な状況を更新するのに理想的な場所であり,そのデータをプレイヤーのコンピューティングに供給して,高LODのシミュレーションを処理できます」とJenner氏は語る

 「クラウドコンピューティングは,大規模で複雑なシミュレーションを永続的に行うことができ,多くのプレイヤーが一度にアクセスできるようにします。プレイヤーが直接関与していなくても,世界自体が環境を変化させるように作用するような,共有された進化する世界で多くのプレイヤーが相互作用できる方法を見つけるための可能性は無限大です」

 Jenner氏は,ImprovableやHadeanなど,この種のクラウドを利用した大規模シミュレーションを可能にするソリューションに積極的に取り組んでいる企業を指摘している。

オープンワールドゲームの再評価

 もちろん,これは氷山の一角にすぎない。これらの提案を実行することで,より永続的な世界の創造が可能になる一方で,物語性,レベルデザイン,アート制作などの他の分野では,ワールドスケールの創発的なゲームプレイが提供する強みを最大限に活用するために適応しなければならず,より多くの課題が生じる。

 しかし Jenner 氏は,これを受け入れることがオープンワールドというジャンルをリフレッシュさせる鍵になると考えている。

 「ワールドそのものをゲームプレイの中心に据えることは,経験の多様性やまとまりという点でプレイヤーにメリットをもたらし,選択された選択に意義を与えることになります」と氏は語る。「真に生きているワールドは,空虚で生命感のないものではありません。我々は,詳細な小規模シミュレーションから得られる創発的な体験を犠牲にすることなく,このような深みを加えることができます」

 「次世代家庭用ゲーム機やクラウドからの処理能力が向上した世界に移行していく中で,プレイヤーに多くを与えつつも,大規模な世界とのより深いインタラクションを可能にする時期がきているのです」

 講演全体は以下で視聴可能だ。




著者: “jp.gamesindustry.biz編集部 — jp.gamesindustry.biz

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【ACADEMY】Mike Bithell氏:ゲーム業を始めるときに知っておきたいこと –

Mine Sasaki

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GamesIndustry.biz Live:ACADEMYでは,Mike Bithell氏がキャリアの中で学んだ6つの教訓を紹介し,デベロッパ志望者がゲーム業界で成功を収めるためのヒントとなるような内容を紹介した。

 ゲーム業界に入ると,ゲームデベロッパとしての無限の可能性に圧倒されがちだ。コーディング,アニメーション,ドローイングの方法を知っていることは,方程式の最初の部分にすぎない。そこから何から始めればいいのだろうか?

 1人でやるのか? 会社に就職するか? フリーランサーとしてサービスを提供するのか? 自分のスタジオを作るのか? そして,あなたの頭の中には無数のアイデアが渦巻いているが,その中であなたがリリースに向けて取り組むべきプロジェクトはどれだろうか?

 GamesIndustry.biz Live: ACADEMYでは(参考URL),Bithell Gamesの創業者であるMike Bithell氏が,ゲーム業界に入ったときに知っておきたかったことを語っている。

Mike Bithell氏
【ACADEMY】Mike Bithell氏:ゲーム業を始めるときに知っておきたいこと

 「この種の話をするように依頼されることはよくあります」と氏は語る。「私がいつも直面する問題は,カンファレンスや私のような立場の人からのアドバイスは過去に起こったことなので,ほとんどが時代遅れのものになってしまうということです。この業界は常に大きく変化しており,その人の状況に合わせて非常に具体的に結びついています」

 「私が話せそうなのは『Solitaire Conspiracyの鍵は,たくさんのウィッシュリストを集めることでした』とか,『ポッドキャストにたくさん出演したり,Twitterのフォロワーがいるだけでいいんです』といったものくらいです。しかし,それはまったく役に立ちませんし,私はいつもこのような講演で意味のあるアドバイスをするのに苦労していました」

 Bithell氏は,堅苦しい戦略のアドバイスを提供するのではなく,この業界に入ったときに役立つ教訓や考え方に焦点を当てて話をすることにした。

 「私が話したいのは,私の考え方や,当社や私の周りの人たちがどのように問題を考えて話しているのか,当社がどのように設定されているのか,どのようなゲームを作っているのか,どのように作っているのか,ということです」とBithell氏は語る。「2013年に効果があった特定のビジネステクニックを実行しろというよりも,より一般化された方法で学んだ教訓の束のほうが有益でしょう」

1. 十分なサービスを受けていないオーディエンスを見つける

 Bithell 氏は,ゲームメーカーを目指す人たちへの最初のアドバイスとして,「十分なサービスを受けていないユーザーを見つけること」を挙げている。取り組みたい夢のあるゲームがあるかもしれないが,始める前に市場を慎重に検討するほうが良いアプローチになるかもしれない。早い段階で成功を収めることで,情熱的なプロジェクトに取り組む自由度が高まる。

 「他に誰もいない場所や,多くの人がプレイヤーとして参加している場所を見つけて,その機会を素早く得ることです」とBithell氏は説明している。「問題は,歴史的に見て,このような例はすべてバブルだったということです。素晴らしい機会があった瞬間に,数人の人々がその機会を利用し,非常にうまくやって,そして他のみんなが飛び込んできて,突然それは過密になります」

誰も気づいていないチャンスを見つけて,それに飛び込むことは,本当にクールなことです

 このような状況の良い例として,Nintendo Switchでの発売が挙げられる。このゲーム機は当初,ソフトウェア面でのサポートが少なかったため,実際にプラットフォームに投資した少数のデベロッパにとっては大きなチャンスとなった。

 「最初から存在していた少数のインディーズゲームは,実際にそれをチャンスに変え,多くのゲームが存在しなかったために多くのゲームを販売しました」とBithell氏は語る。「何が起こったかというと,それらのゲームは記事にされ,話題になったのです。我々や他のインディーズの人たちは,自分のゲームを持ってプラットフォームに群がりましたが,もちろんその時点では…… まだ多くのチャンスはありましたが,巨大なオープンスペースはなくなっていました。そして今,Switchストアでは少し落ち着きを取り戻し,期待どおりの数字になっています」

 「これは本当に良い歴史的な機会であり,結果ではなく思考プロセスを考えるという点で,私が言っていることをよく表していると思います。ですから,Switchでゲームを出すのではなく,スペースがあればどこでもゲームを出してください」とBithell氏は付け加えている。

 Bithell氏は,彼のスタジオも過去にThomas Was Aloneでこの恩恵を直接受けたことがあると付け加えた。というのも,ほとんどのAAA企業がPCから離れていった時期に発売されたからだ。

 「Thomas Was Aloneは,他に何も出ていなかったので,数週間は Steam のフロントページに掲載されていました。それは我々にとって非常に効果的で,聴衆を見つけてくれました。他の誰も見ていない瞬間やチャンスを見つけて,それに飛び込むというのは,本当にクールなことなんです」

2012年に発売されたThomas Was Aloneは,多くのAAAゲーム会社がPCゲームから離れていた時期に発売された
【ACADEMY】Mike Bithell氏:ゲーム業を始めるときに知っておきたいこと

2. クランチにしない

 Bithell 氏は,今の時代に就職市場に出てきたデベロッパの世代は,クランチがもたらす害をすでに認識しているようだと指摘しているが,業界で成功するための礎石として,クランチをしない方針を強調している。

 「クランチにならないでください」と氏は簡単に語った。「クランチ時の生産性の数字は驚くべきものです。何を作るにも本当に非効率的な方法です。すべての研究で得られたデータによると,クランチは通常,最高でも1〜2週間は効果があり,その後,クラッシュして,すべてがスローダウンすることが明確に示されています。長期休暇を取ったり,週末に休んだりすることで,明らかに仕事が増えることが証明されています」

 「もしあなたがチームや会社を立ち上げようとしているのであれば,間違いなく,最初からクランチをしないことを目標にしてください。そして,それに固執し,それを回避する方法を見つけ出してください。スコープを柔軟性にし,他の方法であなたのスケジュールの柔軟性を把握して,バッファタイムを配置し,あなたのチームが呼吸できるスペースを作ってください」

あなたのスケジュールを管理し,それがうまくいかないときの言い訳を受け入れないでください。クランチが発生したとき,それは常に管理の失敗です」

 Bithell氏は,単に正しいだけでなく,ビジネス的にもそれは意味がないと指摘している。

 「人々を焼き尽くし,病気にさせ,家族から遠ざけているだけでなく,より良い製品やより多くの製品を作っているわけではないので,より多くのお金を稼ぐこともできない。たとえあなたが,自分のために働く人々を苦しめたいと思うようなひどい人間であったとしても,それは悪い考えだ。」

 Bithell氏は,従業員がクランチしないようにすることは非常に厳しいとしながらも,個人的には過去に長時間労働に悩まされたことがあると語っている。これは,あなたが仕事に情熱を抱いている場合,一般的な注意点だ。

 「Volumeを作っているときに動悸で病院に行ってしまったことがあります。あまりにも長時間働いていたからです」と氏は語った。「時間を管理し,私が話す原則に沿って生活しているかどうかを確認するという点で,私にとっては本当に目が覚めた事件でした。スケジュールを管理し,それがうまくいかなかったときの言い訳を受け入れてはいけません。それは,常に管理の失敗です」

2015年に発売されたVolumeの制作中にBithell氏は動悸で病院に入院してしまったという
【ACADEMY】Mike Bithell氏:ゲーム業を始めるときに知っておきたいこと

3. 自分の強みを発揮してユニークになる

 自分の得意なことがあれば,それに集中して取り組むべきだ。だからといって,自分の居心地の良い場所から出てはいけないというわけではないが,自分のアイデアを実際に実現できるかどうかを確認するために,既知の領域に留まってもまったく問題ない。

 「我々が常に恩恵を受けてきた大きなポイントは,自分の強みを活かすこと,つまり,自分やチームができることを活かしたゲームを作ることでした」とBithell氏は語る。「あなたが得意なことはなんですか? 文字どおり,自分の得意なことを箇条書きで書き出してみても損はありません。そして,あなたのゲームは,おそらくほとんどがそれらについてのものでなければなりません。作れるゲームを作ることは恥ずかしいことではないのです」

あなたができることの中で優れていること,クールなことは何ですか?  作れるゲームを作ることは恥ではありません

 「何をプロデュースできるのか? あなたができる優れたもの,かっこいいものは何か? できないことは,たぶん避けたほうがいいでしょう。我々の一般的なルールは,80%は自分たちがうまくやれると思っていることをやって,20%は新しいものを入れていくというものです。とくに,常に自分たちを前進させたいと考えているからですが,同時に,自分たちができることを取り入れていくことも非常に重要なことです」

 氏は,ストーリーやプレゼンテーションなど,Bithell Gamesがとくに得意としていることの例をいくつか挙げた。しかし,ときおり,チームは自分たちが得意としていない分野に踏み込んでいくことがある。The Solitaire Conspiracyの場合はそうだった。

 「Solitaire Conspiracyでは,SF的なストーリーやクールなアートディレクションなど,自分たちが得意とする領域に重点を置いていましたが,私はカードゲームをコーディングしたことがありませんでした。John Wickについても同様で,映画の側面をうまく表現できることは分かっていました。スタイルも分かっていました。インタラクションを本当に面白くできることも分かっていたのです。これも今までやったことのないことでしたので,その辺を重点的にやっていきました」

Bithell氏はSolitaire Conspiracyの前にカードゲームを作ったことがなかったとのこと
【ACADEMY】Mike Bithell氏:ゲーム業を始めるときに知っておきたいこと

 Bithell氏は続けて,「自分の強みを発揮するもう1つの側面は,自分だけのものを作ることです。コアとなる考え方は同じですが,これは,ゲームのための明白なアイデアとは思えないようなものに焦点を当てて,自分にとってユニークな興味を探っていくことです」

 Bithell氏は,自分はミュージカルが大好きな演劇オタクで,テーマパークなどにもハマっていると語る。いつかゲームにしたいと思っているという。

 「あなたのチームの人々が興味を持っていることは何ですか? 我々はしばしば,これらのことを,山を歩いているときに頭の中にアイデアが浮かんできて,それが今までで最高のアイデアであるというようなものだと考えています。ほとんどの場合,とくにエキサイティングなアイデアはそこから生まれるわけではありませんが」

 「たいていの場合,それは奇妙な興味を持っている人のものです。ゲームを作ったりプレイしたりする人のほとんどが興味を持っていないものに興味を持っていたり,今までにない2つのものを組み合わせて,その結果として何かクールなものを見つけたりしているのです。それは有効です。それがイノベーションであり,オリジナリティなのです」

4. 優しさを優先する

 Bithell氏がキャリアを通して学んだもう1つの重要な教訓は,優しさを優先し,感情的な知性を示すことだ。

 「“意地悪な天才”のような類型の話に傾倒しないようにしましょう」と氏は語る。「それは疲れますし,価値がありません。私は信じられないほど幸せで,本当に良い人たちと一緒に仕事ができることを誇りに思っています。私は,Rick and MortyのRick Sanchezのような性格のタイプはあまり好きではありません。人に意地悪をできるほどの知性はありませんし,私はそれにはほとんど耐えられません」

人に意地悪をできる知性はありませんし,私はそれに耐えられません

 Bithell氏 は,キャリアの中でこのようなことにしばしば遭遇していたが,この業界に入って間もない頃はそのようなことがあったかもしれないと認めている。しかし,「成長するにつれて」,それが絶対に間違ったアプローチであることに気付いたという。

 「会社として,我々は誰もがサポートし,善意であることを奨励するようにしています。そして,それは少し軟弱に聞こえるかもしれませんが,重要なことです。もっと早くから優先順位をつけておけばよかったと思います。しかし,感情的な知性と『ソフトスキル』は,それ以上に重要ではないにしても,それと同じくらい重要だと思います」

 Bithell氏は,批判とはまったく別のものであり,ゲームデベロッパとしては,批判に対して非常にオープンでなければならないと指摘している。

 「お互いの作品を批判し合うのは気楽なものです。しかし,私は批判を超えて,ひょっとしたら自分の作品に冷酷な態度をとる人に遭遇したことがありますが,これは業界として乗り越えるべきことだと思います」

 「それは,退屈なビジネス上の理由としては,人を維持したり,人を引き留めたり,最初のチャンスを得たときには離れたくないという点で,とても重要なことなのです。その結果,我々は良いスタジオ文化を持っていて,人々は離れない傾向があるので,人々がお互いにひどいことをしないようにすることはビジネス的にも理にかなっています」

John Wick Hexでは,Bithell Gamesは過去のプロジェクトよりも戦略的なものを目指していた
【ACADEMY】Mike Bithell氏:ゲーム業を始めるときに知っておきたいこと

5. 現状に挑戦し,仲間を求める

 Bithell氏は,次のアドバイスを「自滅の連続」と表現し,若者たちに,自分やカンファレンスで話を求められるような人の話を聞かないように勧めた。

 「必ずしもそのような人たちの話を真に受けてはいけません」。「つまり,年長者やヒーロー,ソーシャルメディアでフォローしている人たちからは,常に良い知恵を見つけることができるのは明らかです。しかし,私はまた,多くのナンセンスがあると思います。5年前,10年前,15年前,20年前にはうまくいっていたことが,今ではうまくいかないこともたくさんあるのです」

 「そして最終的には,すべてのクリエイティブな世代の仕事は,パンクになって,現状を少し変えることに挑戦して,最終的に物事を変えていくことだと思います。我々はそうしてきました。私達の前の世代もそうでした。そして次の世代はそうすべきです。それは重要なことであり,有益なことだと思います」

パンクになって,現状維持に挑戦するのは,すべてのクリエイティブな世代の仕事です

 だからといって誰の話も聞かなくていいというわけではないが,年長者の話よりも仲間の話を聞くべきだと彼は続けた。
 「これは私が一緒に仕事をしている生徒や話をしている生徒によく言う話です。大抵の場合,彼らの仲間はより多くの洞察力を与えてくれるでしょう。彼らの仲間は,その日の文化にもっと触れることができます。彼らの仲間は自分のキャリアを築き上げています ―あなたはともに永長できるのです」

 氏は,ゲーム業界には世代間のグループがあり,同じ時期に成功を収めた人たちが集まっていることを強調した。

 「そのため,このような奇妙な,時間に縛られた仲間のグループが存在するのです」と氏は語る。「それは良いことです。とくに起業したばかりの頃は,周りを見渡して才能のある人たちを見つけ,その人たちに惹かれ,その人たちから学び,その人たちと一緒に仕事をして,お互いを高め合うことが大切だと思います。そうすることで,新しいスペースが開かれていくのが分かるでしょう」

6. 外向的であることを学ぶ

 多くの人にとって,ソーシャルメディアや大規模なイベントのショーフロアで作品を世界に向けて発表することは自然なことではないだろう。もしかしたら,彼らは内向的な性格なのかもしれないし,もしかしたら詐欺師症候群にかかっているかもしれないし,自慢することを嫌う文化の出身なのかもしれない。しかし,Bithell氏は,その気持ちと戦い,ただそれに向かって行く必要があると語る。

 「Twitterで私をフォローしている人や,私の話をたくさん見てきた人には信じられないかもしれませんが,私はいつも目立つのが憂鬱でした」と氏は語る。「我々のことを話すのはあまり好きではないのですが,そうしなければならないのでそうしています。実際,そうしています。たくさん。あまりにも多くのことを。そして,それは良いことだと思います」

 「これは不思議なことに,イギリスのデベロッパにはよくあることだと思いますが,アメリカや他の国ではあまりないかもしれません。しかし,間違いなく,自分が作ったものを見せびらかすこと,自分が作ったものを宣言して,オーディエンスに応援してもらったり,欲しい物リストに入れてもらったり,購入してもらったり,友達に教えてもらったりすることには,恥ずかしさがあります。見せびらかすことには神経質になることもあると思いますが,私はそれだけの価値があることをお伝えします。そのように感じるのは構いませんし,そのように感じるのは普通のことですが,同時に,自分のものを見せびらかす勇気を持ち,それを共有することが最終的にはポイントなのです」

 自分の作品を宣伝することは,そもそも作品を作ることと同じくらい重要なことなのだ。しかし,それを正しく行う方法があるので,適切なバランスを見つける必要がある。そして,もう少しキャリアが確立されたときには,これらのことを行うためのサポートがあることを覚えておいてほしい。

 「パブリッシャやプラットフォームの所有者が,そういうことをしてステージに上がってほしいと言ってくるようなことがあったら,助けを求めてもいいのです」と氏は語る。「彼らに助けを求めてもいいのです。彼らはプロで,我々の誰もを有能な人前で話すことができるようにしてくれますし,通常はかなりの忍耐力を持っています」


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Mine Sasaki

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著者: “jp.gamesindustry.biz編集部 — jp.gamesindustry.biz

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