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「Sony Creators Gate」の三者対話ライブ “trialog vol.10 -クリエイターと社会のディスタンス-”開催レポート

Mine Sasaki

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trialogとして記念すべき10回目となる今回は、これからの時代に向けてプロトタイプに挑むクリエイターと、新しい価値を生み出そうとしているソニーのプロジェクトや事業に関わるキーパーソンが、 “クリエイターと社会のディスタンス”というテーマで、4つのセッションを通して議論。セッション1では「エッセンシャルとは何か」、セッション2では「クリエイターをどうエンパワーメントするか」、セッション3では「クリエイターのアクション」、セッション4では「クリエイターとデジタルプレイス」をテーマに、コロナ禍を通して大きく変化した社会におけるクリエイターのあり方をゲストと共に考えました。

また今回はコロナ禍を受け、無観客オンラインで開催。新たな試みとしてセッション2、セッション3は同時に行われるセッションのうち一つを選択して視聴する形式を採用し、台風14号の影響を考慮してモデレーター以外の登壇者は全員リモートで登壇とするなど完全オンラインの特徴を活かしたイベント構成となりました。イベント視聴者からも、多数の質問が寄せられ、議論はさらに盛り上がりを見せました。同じ空間を共有できない中でも、全員が初めて直面している社会の変化に対し、一体となってより良い未来を考えるイベントとなりました。

加えてライブ動画配信の総視聴回数は、約150万回を記録しました。これらのライブ映像やイベントレポートは、今後 trialog WEB サイトや trialog YouTube チャンネルにて公開する予定です。

■ trialog 公式WEBサイト:https://trialog-project.com/ 

■ trialog 公式YouTubeアカウント : https://www.youtube.com/channel/UCE60zHsZx9YZRNx4eGOYJmg

 

  • “trialog vol.10 -クリエイターと社会のディスタンス-”開催レポート

■SESSION 1
 Essential|エッセンシャルとは何か─ 篠田ミル×山根有紀子×若林恵

このコロナ禍で感じたこととして、「#SaveOurSpace」という署名運動プロジェクトを立ち上げた篠田氏は、「ライブハウスなどの業界は、主体となる団体や組合が存在していないことが課題だと感じた。また、国の定義する文化の中にそれらが含まれていなかったことに気づかされた。」と語った。それを受けて、患者さんの願いを企業とのコラボレーションによって叶える「CaNoWプロジェクト」を発足したエムスリー山根氏は「医療業界は、医師会が存在する点では明確に異なる。ただ、患者さんがこの時期に病院に行きたくないという“通院控え”に、一番患者さんと距離の近い、街のお医者さんが困っており、新しいシステムの構築が必要な点では共通していると感じた。」と答えた。
若林から、「コロナ禍において“不要不急”という言葉が唱えられる中で、『文化は“不要不急だ”』と言う人もいたが、なぜ大事だと思うか?」と問われると、篠田氏は、「人間とそれ以外の動物や機械を分けるものは『文化』だけだと考えている。人間という概念を下支えするものであると思う。」と話した。それに対し、山根氏は、「医療が成立するには患者さんの生きる意志が重要になってくる。その意志は、誰かと関わることで生まれ、明日何がしたいかという気持ちである。前に向かうエネルギーは医療だけでは提供できず、人間の根源となる文化からしか生まれないものだと思っている。」と医療の視点で考える、文化の重要性について話した。

■SESSION 2(選択式セッション)

Empowerment|クリエイターをどうエンパワーメントするか─ミツ・カンダガー×吉田修平×水口哲也

新作ゲームを試してもらう重要なリアルイベントが軒並み中止となっているこの状況において、インディーゲーム支援を行っている吉田は「オンラインで補完する形でサポートすることが必要」と述べた。この1年は、ゲームクリエイターも孤立した環境下に置かれ、試された1年となったが、変化し続けるゲーム業界の流れについて「昔に比べ、ゲームを制作するためのコストや敷居がとても下がった。それにより新しいクリエイターやプラットフォームが生まれ、様々な視点から新しいアイデアを生み出せるようになった。」と話す吉田。

それに水口も賛同し「インディーゲームが出てきた時、ゲームクリエイターはアーティストであると感じた。」と話した。これを受けニューヨークでインディーゲームクリエイターとして活躍するミツ氏は「ゲーム業界には構造変化が必要。多様なバックグラウンドを持っている人や女性、有色人種の方に対し、もっと包摂性を高めるべきである。」と語った。ニューヨーク大学でゲームデザインを教えるミツ氏は、リモート授業の中でどう生徒をエンパワーメントしているかについて問われると「世界中のゲームスタジオも同じ環境でゲームを制作していることを伝えている。最高な環境とは言えないが、この環境下が自身の成長に繋がることをポジティブに話している。」と答えた。ゲーム業界の成長について問われると吉田は「ゲーム業界の中でマネジメントする立場の女性は増えてきているが、女性がゲームのクリエイティブをリードするという部分においては途上段階。ゲームを作る上でユーザー全体の知識が必要であり、知ることでより成功するタイトルを作ることができる。」と語った。

■SESSION 3(選択式セッション)

Action|クリエイターのアクション」─ YonYon×TAO×若林恵

ハリウッドを中心に女優、モデルとして活躍するTAO氏は、本年5月ごろから広がっているBlack Lives Matter(BLM)について、「ソーシャルメディアが発達しているが故に、その問題に対して自分のスタンスをとらないのは、発信する立場として好ましくないと考えている。」と自身のアクションへの姿勢について語った。そのことに、DJをはじめとしてマルチにクリエイターとして活動するYonYon氏は、「Black Lives Matter(BLM)のニュースで、アーティストもそれに関する発言が増えた。その発信に、アーティストは意見をするな、という反応も多かった。」とコメント。続けて、「アーティストは、一コンテンツと考えられ、一人間として認識されておらず、ポジティブな感情を発信することは許されても、怒りを伝えることは受け入れてもらえないと感じる。」とも話した。TAO氏はその意見に賛同しつつ、「日本は、和を乱すことを嫌がる傾向にあるし、自分も日本にいたらこのような発信はできていなかったと思う。それは今後アップデートしていく必要がある。」と話した。若林から「影響力を持つ者として、自分の仕事の領域において、どうアクションすべきだと思うか?」と問われると、YonYon氏は、「自分の意見については、アーティストとして、作品を通じて発信し、リスナーのみなさんに“世界を変えるきっかけ”になるような気づきを与えたい。」と話した。TAO氏は「俳優は、これまで作品に起用されないと発信することが難しかったが、ソーシャルメディアの普及により、変わってきた。ソーシャルメディアで発信を行いながら、今後はプロデュース業もできるようになりたい。」と話した。 

■SESSION 4

Digital Place|クリエイターとデジタルプレイス─ 神戸雄平×アンドレ・ルイス×水口哲也

本イベントのテーマでもある、クリエイターと社会との距離感について問われると、PERIMETRONのメンバーでデジタルアーティストの神戸氏は「社会性を作品に落とし込むのは、非常にセンシティブ。テーマを自分の中に落とし込んで飲み込めた場合のみ作品としてアウトプットしている。」と話す。またクリエイターが作品を作っていくまでの過程が、コロナ禍でデジタル上のみになっていることを受け、世界中のクリエイターが集まるクリエイティブ・コミュニティ「Trojan Horse was a Unicorn」の創設者であり、「体験すること」を大切しているアンドレ氏は、「現在はクリエイターに対してデジタルでの繋がりを提供することを考えている。それにより解決出来ることも増えている。」と述べ、その一つであるソニーと共同で発足した『Sony Talent League(ソニータレントリーグ) by THU』について、セッションの最後に紹介。「若い世代のクリエイターへ手を差し伸べ、才能を発掘するために発足した。」と話した。これを受け、水口は「今年は、偶然がもたらすインスピレーションが減った気がする。様々な物がデジタルに置き換えられてきたが、置き換えることが出来なかった物も浮き彫りになった。」と話し、リアルとバーチャルの使い分けやクリエイティブの未来について問いた。「クリエイティブは、同じ空間を共有しなくても作ることが出来るが、若いクリエイターが繋がりを見つけていくうえでは物理的な世界が必要。」とアンドレ氏は述べる。神戸氏はそれに対し、「リアルな場がなくなったことで、作品を体験した人のリアルな熱を感じることが出来なくなっているが、デジタルの人間にとってフィールドがより広がり新しい世界へ繋がっていると感じる。」と話した一方で、「新しいツールに踊らされず、むしろ逆手に取るようにしている。」と自身の制作のこだわりについて語った。

今後もtrialogは、次世代を見据えたクリエイティブプラットフォームとして実験的な試みを重ねながら、展開していく予定です。これからの活動にご期待ください。
 

  •  登壇者 ゲスト プロフィール

 

 

  • trialog代表 若林恵 プロフィール

 

  • trialog共同企画者 水口哲也 プロフィール

 

trialog(トライアログ)は、次世代に向けた“対話”のプラットフォームです。trialogでは、世の中を分断する「二項対立」ではなく、異なる立場の三者が意見を交わす「三者対話」の空間をつくり、「ほんとうに欲しい未来はなにか?」について議論を深めながら、次世代に向けた自由でクリエイティブな生き方と、その未来のあり方について考えるトークイベントを実施しています。イベントの様子は、Sony-Stories公式Twitterアカウントとtrialog公式Twitterアカウントでライブ配信を行います。視聴者はネット上からリアルタイムにコメントを投稿することで対話の場に参加できます。イベント後は公式WEBサイトでアーカイブ映像を公開します。

■ trialog 公式WEBサイト         : https://trialog-project.com/

■ Sony-Stories公式Twitterアカウント : @storiesbySonyJP (https://twitter.com/storiesbySonyJP

■ trialog 公式Twitterアカウント     : @trialog_project (https://twitter.com/trialog_project

■ trialog 過去のイベント記事        : https://trialog-project.com/article/

■ trialog 過去のアーカイブ動画     : https://www.youtube.com/channel/UCE60zHsZx9YZRNx4eGOYJmg

ソニーは、多様なバックグラウンドや経験を持ち、新しい価値を創造する人を「クリエイター」と捉えています。そして、次世代を担うクリエイターのアイデアが世の中の人々のクリエイティビティに力を与え、新たなアイデアの創出につながることで、夢や好奇心と、感動に満ちた世界を実現できると信じています。「Sony Creators Gate」は、次世代のクリエイターに将来的な飛躍へのきっかけとなるような刺激的な機会を提供したいという思いから、これまでに、24歳以下の世代を対象とした「U24 CO-CHALLENGE 2020(ユーニジュウヨン コーチャレンジ ニーゼロニーゼロ)」、中学・高校生を対象とする「ENTERTAINMENT CAMP(エンタテインメント キャンプ)」、小学生を対象とする「STEAM Studio(スティーム スタジオ)」、そして次の世代に向けた「trialog(トライアログ)」を実施してきました。また新しいプロジェクトとして「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア」と「Trojan Horse was a Unicorn」との取り組みを加え、その活動を広げています。

ソニーのPurpose(存在意義)は、「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」ことです。Sony Creators Gateの活動を通じて、次世代のクリエイターが創造力や表現力を発揮できる環境作りを支援していきます。

Sony Creators Gate公式サイト: https://www.sony.co.jp/creatorsgate/

 



著者: ” — prtimes.jp

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レトロンバーガー Order 53:Atariの新ハード「Atari VCS」に,「見た目はデスメタル系だけどJ-POPをカバーしてるバンドみたい」とか言う編

Mine Sasaki

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 あけましてる!?(新年の挨拶)

 いやあ,昨年末は非常に盛り上がりましたね。最高でした,RTA in Japan 2020

 マッチョマンから握り寿司まで大爆走して,安心と信頼のカプコン製ヘリから最強の尖兵まで爆発四散。ホットプレートが白熱し,RTAちゃんが魔改造され,納期のテーマが奏でられ,霧の街に「恋にドロップドロップ☆」が響き,シザーマンやマザーマンが襲来し,各作品でファイナルソードが定義され……おもしろポイントを挙げていったらキリがありません。

 優れたオーディオプレイヤーが楽曲の深い魅力を再生し,優れたスポーツプレイヤーが白熱の試合を繰り広げ,優れた楽器プレイヤーが感動的なパフォーマンスを披露するように,優れたゲームプレイヤーは開発者によって想定された以上の「ゲームの面白さ」を引き出すことができます(まあ,ゲーム自体が面白いかどうかは別ですが)。さらに,チャリティイベントだから,グッズ購入やTwitchサブスクライブなどを通して,COVID-19対策で活動している国境なき医師団に寄付ができる! ゲームの攻略を観覧して,現実的社会問題も攻略!

 また,RTA in Japanは「心霊呪殺師 太郎丸」「カイザーナックル」「ジ・ウーズ」といった,20年以上前の大人気ゲームも取り上げられるステキなイベントであり,スピードラン特化の異様なプレイを観られたり,ド肝を抜くようなグリッチが披露されたりするので,レトロゲーマー諸氏はサブスクったり(TwitchとAmazon Primeを連携すれば追加料金無しで可能),YouTubeアーカイブの再生数を回したり,走者になって出場を目指したりすると良いのではないでしょうか。

今回はこっから本題
画像集#001のサムネイル/レトロンバーガー Order 53:Atariの新ハード「Atari VCS」に,「見た目はデスメタル系だけどJ-POPをカバーしてるバンドみたい」とか言う編

 そして年始も大きな出来事がありましたァ! 昨年11月にPS5とXbox Series Xが発売されて,2か月ちょっとが過ぎたわけですが,未だに両方とも品不足が続いています。それというのも,これまたCOVID-19の感染拡大で世界的に製造業の稼働率が低下しているため。半導体業界では味の素グループが製造している半導体用絶縁材・Ajinomoto Build-up Filmがとくに不足していて,ゲーム機のほか,スマートフォンや自動車の市場も多大な影響を受けているそうです。味の素とゲームと言えば,「味の素マヨネーズ」の懸賞で配布されたスーパーファミコン用ソフト「もと子ちゃんのワンダーキッチン」ですね。連想しただけで別に意味はありませんけど。

 筆者はOrder 51において「Xbox Series Sは買ったけど,PS5が買えていない」と述べました。ですが年始! ヨドバシカメラの秋葉原店や新宿店などでPS5のゲリラ販売が行われたことは,Webのニュース媒体などを通してご存知の人も多いでしょう。

 そんなわけで,あの最新ゲームハードがついに我が家にやって来ました! いま遊んじゃえ,俺達未来派!(それは1987年)

テッテレー!(華やかなSE)
画像集#006のサムネイル/レトロンバーガー Order 53:Atariの新ハード「Atari VCS」に,「見た目はデスメタル系だけどJ-POPをカバーしてるバンドみたい」とか言う編

 今回は,2020年末に北米で出荷がスタートされ,日本のIndiegogoサポーターには2021年1月10日前後に届けられた「Atari VCS」でやっていきましょう。PS5とか見たこと無いっすね。都市伝説じゃないんすか? 真冬の風が突き刺す今日このごろ,一体全体この東京で俺は何を見ていたんだろう?(未来の生命体)

照らしてけカリフォルニア

 Atari VCSは,1993年の「Atari Jaguar」以来,約27年ぶりにリリースされた,Atariの名を冠するゲーム機です。

 まあ,細かいことを言えばAtGames開発・Atari販売のPnPゲーム機「Atari Flashback」シリーズなんかもありますけど。Atariの偉い人が言うには「Atari VCSの基本コンセプトはあくまでも,『テレビ向けのコンピュータシステム』だ」ということだそうですけど。あと「27年ぶりのAtariと言っても法人格的には……」みたいな話は超ややこしいので割愛しますけど。

Order 1から再利用の「Atari Flashback 8 Gold」
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 「Ataribox」という名称のAMDプロセッサを搭載したLinuxマシンを開発中であることが発表されたのが2017年10月2018年3月のGDC 2018で「Atari VCS」と改められた製品名とモックが正式発表となり,2018年5月にIndiegogoでクラウドファンディングがスタート。10万ドルのゴールを1分未満で達成し,最終的には目標額の3000%オーバー(305万8123ドル)まで到達しました。筆者も出資者でありながら何ですが,これだけのAtariユーザーがどこから湧いてきたのか不思議でたまりません。湧いて出てきた古参兵をジオン残党に見立てるネットミームがありますが,こんなにジオン残党が出てきたらトリントンどころかジャブローやラサも更地になります。

 ただ,Indiegogoでサクセスしてからが受難続きでした。当初は2019年春の出荷予定だったものの,2018年5月の一般予約開始と共に出荷時期を2019年7月と訂正。しかし2019年3月の最終デザイン公表にあわせて2019年下半期の出荷と訂正,さらに2019年6月のE3 2019におけるハードウェア仕様の公表などとあわせてIndiegogoサポーター向けは2019年末,一般向けは2020年3月に出荷と訂正。そして2020年に入ると冒頭でも触れた半導体不足の影響か,出荷時期未定での延期。同年7月には秋に出荷と発表されたものの,その秋も静かに過ぎていきました。

 単に開発が遅れただけではありません。システム設計を担当していたRob Wyatt氏(初代XboxやPS3のグラフィックアーキテクチャの開発に携わった人物)が「給与が未払いである」とAtariを告訴したり(Wyatt氏は未払いを理由として辞任済み),Order 40でも述べたように“Atari VCS版「Tempest 4000」”をめぐってLlamasoftがAtariを批難したりと,けっこうキナ臭さが立ち込めたりもしていたものです。

 そんなわけで,Indiegogoのサポーター向けメールアドレスから,「This is the last chance to change your order and add any add-ons」(注文を変更してアドオンを追加する最後のチャンスです)と記されたテキストのみの簡素なメールが届いたときも,筆者は「か〜ら〜の〜?」ぐらいに思っていました。

ゲームボーイアドバンス用の作曲ソフトとして開発され,iOS / Androidアプリ版が開発されたりもした「nanoloop」のハードウェア版
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 それが,まさか本当に届くとは。いやカネ出してるんだから届いてくれなきゃ困るんだけど。だって,まだSmachZもPolymegaも届かないわけですよ。それらを待ってる間に,ハードウェア版nanoloopのkickstarterキャンペーンが始まって終わって完成品が届いたくらいです。ちなみにOrder 16で「2020年はAtariとIntellivisionが直接対決となる,歴史的な年になりそうですね」と(例によってテキトーなことを)述べていましたが,Atari VCSはギリギリ2020年に間に合ったものの,Intellivision Amicoは2021年4月へと延期されています。それにしても,バッカー向けメルマガすらまちまちになったSmachZは,さすがになんとかしてくれないかな。

うとうとしてけ火の勇気

 Atari VCSのハードウェア構成はPCベース……と言うか,PS5やXbox Series Xを「PCベース」と呼ぶなら,Atari VCSは「普通のPC」です。なにせ,標準で搭載されている「Atari OS」は,Linuxベース(Debianディストリビューション)の設計。ただ,Atari OSはUI機能に特化していて,デスクトップやターミナルなどは使えません。また,日本語などの2バイト文字全般に非対応なのは難アリです。

Atari OS起動画面は「Asteroids」を模したもの。ちなみにLinux系と言えば,ニンテンドークラシックミニもメガドライブミニもPCエンジンminiもCapcom Home ArcadeもLinux系OSではあるのですが,何が違うかを解説すると記事が1本できてしまうので,気になる人は調べてみてください
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 「Linuxベースのゲーム向け小型PC」という意味ではSteam OSを搭載していたSteam Machineと似ていますが,Steam Machineが「ホームストリーミングを前提とした,ゲームに特化したスペックのマシン」だったのに対し,Atari VCSは「オンラインストリーミングを前提とした,低価格帯ノートPC程度のマシン」なので,設計思想がだいぶ違います(ストリーミングに関しての詳細は後述)。発売時期に約7年の差があるので単純比較はできませんが,Steam MachineのエントリーモデルとされていたSyber「Steam Machine I」ですら499ドルなのに,「Atari VCS 800 Black Walnut All-In Bundle」は389.99ドルなので,価格的にも結構な差があります。

「Atari VCS 800」とコントローラ2種セットの「Atari VCS 800 Black Walnut All-In Bundle」。現在,公式サイトで購入できるのは,このエディションのみ
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 ハードウェアは一枚基板で,搭載されているCPU(APU)は2コア/4スレッド・最大3.5GHzのAMD Ryzen Embedded R1606G(with Radeon Vega 3 Graphics)。基本的にはデジタルサイネージやシンクライアント向けのプロセッサだそうですが,Atari VCSのほかASRockの小型ベアボーンキットに採用されたりもしています。

 「レトロハードを模したワンボードPC」という意味では,HAL研究所のPasocomMiniシリーズと似ていますね。ただ,PasocomMiniに採用されたハードウェアはホビー/小規模開発向けのRaspberry Piでしたが,Atari VCSはフルサイズのWindows 10にすら対応できるハードウェアを採用しています。とはいえAtari VCSの内部ストレージは外部OSのインストールに対応していないので,筐体を分解して基板の空きポートにM.2 SATA SSDを増設するか,USBポートにストレージを挿す必要があります。

 現在のWindows 10はリムーバブルメディアへのインストールに対応していませんが,筆者はエレコムのUSB接続式SSD「ESD-EMN0250GBK」にHasleo「WinToUSB」でWindows 10を書き込むことで,Atari VCSでのWindows 10起動に成功しました。強引な方式で実装したためか,強めの負荷をかけると簡単にフリーズするきらいはある(ドライバ周りが怪しいので手を入れれば安定するかも?)ものの,ぬるく使う分には問題無さそうです。

「3DMark」の「Time Spy」を走らせてみた結果。時間的な余裕があったら,「Cubase 11」をインストールして「最初はAtari ST向けだったCubaseが,Atari Falcon向けの3.0から28年ぶりにAtariハードへ帰ってきた!」というギャグもやりたかったのですが
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 搭載RAMは,上位モデルの「Atari VCS 800」が8GB,下位モデルの「Atari VCS 400 Onyx」が4GB。これもまた分解が必要ですが,最大32GBまでのアップグレードが可能だそうです。

 筐体は,1977年に発売されたAtari 2600をオマージュした(もともと“Atari VCS”はAtari 2600の別名でした)平べったいデザインです。天面/底面サイズはB5判よりちょっと大きく,A4判よりちょっと小さいくらい。

筆者に届いた個体は,Indiegogoサポーター向けの「Atari VCS 800 Collector’s Edition」で,Atari 2600に似せたブラウン木目のフロントパネルが特徴です
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ちなみにこれがAtari 2600
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後面にはHDMI端子,イーサネット端子,USB端子(×2),電源ポート,電源ボタンがあり,前面にはUSB端子(×2)とAtariロゴのパワーランプが備わっています
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 純正コントローラは「Wireless Modern Controller」「Wireless Classic Joystick」の2種類で,これらの製造を担当しているのは低価格帯のゲームコントローラや「MOGA」ブランドで知られるPowerA。「Wireless Modern Controller」はスタンダードなXbox系ボタン配置で,質感は若干チープな感じです。PowerA製のXbox OneやNintendo Switch向けのゲームパッドと見比べると,ボタン配置が似ているうえショルダーボタンは「ほぼそのまま」なので,基板はおおよそ同じ設計でしょう。ちなみにPCにつないでも利用できます。

「Wireless Modern Controller」(右)と「Wireless Classic Joystick」(左)
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とくに意味は無いですが,スティックを倒した方向が光るのは,なんだか嬉しくなる機能
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 Atari 2600のコントローラをオマージュした「Wireless Classic Joystick」は,スティックを倒すほか,スティックを回すことでループレバーとしても使用できます。しっかりしたパドルコントローラほど操作感が良くはありませんが,「Pong」「Tempest」をプレイするにはなかなか便利。裏面のステッカーによると「WIRELESS MODERN CONTROLLER」と同じ制御チップを積んでいるようですが,こちらはPCに挿してもうまく動作しませんでした。

からっぽにしてけ水

 ハードに続いてソフトウェア周りを見ていきましょう。

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最初にユーザーアカウントを作成します。使えるアイコンは「Ninja Golf」の忍者など,やべーやつが揃い踏み

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ログイン時にはカラーバー演出が

 メニューUIは1画面3×3のタイル配置で,10個目以上のタイルはスクロール範囲が右に伸びていきます。ジャンル別に,よく使うアプリが並ぶ「HOME」,ゲーム系アプリが並ぶ「GAMES」,ChromeやTwitchなど一般アプリが並ぶ「APPS」,新たなアプリを購入・ダウンロードするための「STORE」,メニュー周りの「SYSTEM」という5つのタブが存在します。

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 プリインストールされているゲームは「Atari VCS Vault」で,これはSteamなどで販売されている「Atari Vault」のUIを軽量化したバージョンといったところです。本品がウリとしている要素の1つに「Includes 100+ Atari classics!」というのがあるのですが,それを実現する方法が既存のAtariタイトル100本入りソフトを(ほぼ)そのまま投入というのは,ちょっと「物は言いようだな」感がありますね。ちなみに「Atari Vault」にはタイトル追加DLC「Atari Vault – 50 Game Add-On Pack」がありますが,Atari VCSでは専用オンラインストアで販売されている「Atari VCS Vault VOL.2」が同等のものとなっています。

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リーダーボードやオンラインマルチプレイはオミットされているものの,ほぼほぼ「Atari Vault」まんまの「Atari VCS Vault」

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専用オンラインストアの品揃えは,実質的なSteam下位互換といった印象

 専用オンラインストアでは,「Missile Command: Recharged」「Balder Dash Deluxe」といった本連載で触れてる系のタイトルなどが配信されているほか,カジュアルゲームを楽しめる「AirConsole」や,レトロゲームを楽しめる「Antstream Arcade」といったクラウドゲームサービスのクライアントも配信されています。「カスタムLinuxから専用ストアにアクセスさせる」というやり方では提供可能なタイトル数が限られるので,ストリーミング系のサービスを取り入れているようです。

Atariはもちろん,ナムコ,タイトー,テクモ,SNK,彩京,データイースト,ケイブなど,けっこうすごいラインナップを実現している「Antstream Arcade」。そのほかAmiga,ZX Spectrum,Commodore 64と8bit PC向けのタイトルが豊富
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 一般アプリも動画ストリーミングを中心にいろいろ揃っていますが,いずれも基本的に北米版。NetflixのIDはグローバル型なので筆者のアカウントでもログインできましたが,HuluのIDはローカル型なので日本の登録情報ではログインできませんでした。また,前述した日本語非対応の都合上,ログインできてもAmazon Prime Videoなどの利用は難ありです。

YouTubeアプリを立ち上げてみたところ。ちなみにアプリ系の操作にはマウスやキーボードが別途必要
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 Chromeが使えるので,「ブラウザゲームはイケるのでは?」とDMM GAMESにアクセスしてみたところ,「艦隊これくしょん -艦これ-」「マジカミ」「御城プロジェクト:RE 〜CASTLE DEFENSE〜」「オトギフロンティア」などが動作しました。DMM GAMESのゲーム画面は端末のOSに依存しないため,日本語もちゃんと表示されます。ただ,「神姫PROJECT」「あやかしランブル!」など一部タイトルは非動作。これらは,筆者宅に転がっていたUbuntuマシンからFirefoxでアクセスしてみても非動作だったので,Linux系エージェント自体を弾いているのでしょう。

 WindowsやAndroidなどでも利用できるようなアプリやサービスが揃っていますが,「ストリーミング系コンテンツのランチャ」として考えると,使用感はまずまず便利と言ったところです。それに,軽い作業や動画再生などに使うサブPCとしては,十分役に立ちます。

 APPSにカテゴライズされている中で,ちょっと特殊なのが「PC MODE」という項目。これはアプリではなく,Atari OS以外のOSを使うためにリブートする機能です。ブート順は外付けUSBドライブが最優先にされているので,ブート可能なUSBドライブを接続して再起動させるだけでOS切り替えが可能。YouTuberのKevin Kenson氏が検証したところでは,描画は厳しめなものの「サイバーパンク2077」をプレイすることも可能だとか。言うまでもないことですが,要求スペックが「サイバーパンク2077」未満のゲームならば,もっと楽に動かせるはずです。「ちょっとカスタムすればギリギリ『サイバーパンク2077』が動作するAtari 2600みたいな形をした389.99ドルで特殊なOSとコントローラも付属する小型PC」と考えると,お得感すら沸いてきます。

あいまいとしてけ荒野

 昨今,「昔のゲーム機を模したPnPゲーム機」が流行っていることもあり,筆者は「Atari VCSも,その流れに乗ったPnPゲーム機だろう」と思っていました。ですが,実際に触ってみた感触は,PnPゲーム機とはまったく異なるもの。NVIDIA「SHIELD」やMad Catz「M.O.J.O.」などの一昔前に少しだけ流行ったAndroid搭載ゲーム機にも似ていますが,それにしてもOSの切り替えまで想定されているとなると話は少し違ってきます。

 何というか……本当,“普通”にPCなんだよな! 筐体や独自OS以外は普通だからネタとしてイジりにくい! プリインストールのゲームも実質的に既存のものだし! WindowsやらUbuntuやらを動かしてみたとしても,最初から想定されている行為だからハックとも言えないし! 例えるならば「メイクやコスチュームはバリバリのデスメタル系だけど,普通にJ-POPをカバーするバンド」くらいの妙な雰囲気を持ったマシンです。見た目はSlipknotなのにプリプリとかスピッツとか歌うんだ,みたいな。

別の例え方をすれば「地味な眼鏡っ娘が眼鏡を取ったら普通にかわいい」的なマシン。逆に考えれば「普通にかわいい娘に普段は眼鏡が付属」とも言えますね。つまりAtari要素は眼鏡みたいなものです。業界の伝説的な眼鏡という意味では横山やすしさん的であるとも言えます。メガネメガネ。何の話でしたっけ
画像集#008のサムネイル/レトロンバーガー Order 53:Atariの新ハード「Atari VCS」に,「見た目はデスメタル系だけどJ-POPをカバーしてるバンドみたい」とか言う編

 さて近年のAtariは,仮想通貨「ATARI Token」の発行計画を始めていたり,ATARI Tokenを使えるオンラインカジノを構想していたり,eスポーツ大会やVR/ARアクティビティに対応した宿泊施設「Atari Hotels」の展開を予定していたりと,いささか欲張って手を広げ過ぎな感が否めません。事業展開が失敗したら大損害は免れないでしょう。ですが逆に成功したならば,かつて覇者としてゲーム市場に名を馳せたAtariが,金融や体験型コンテンツのプラットフォーマーという切り口から復権を果たすはずです。

 Atari VCSも,これまでのAtariに無かったビジネスなので,“新たなAtari”の始まりを象徴するマイルストーン的なマシンであると言えます。このマイルストーンは,記念碑になるかもしれませんし,墓標となるかもしれません。COVID-19などの影響で揺れ動く現代,老兵・Atariは目指す場所へ辿り着けるでしょうか?

著者: ” — www.4gamer.net

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ゲーム業界ニュース

505 GamesがInfinity Plus Twoを買収 –

Mine Sasaki

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Update: Digital Brosは,Infinite InteractiveとInfinity Plus Twoを450万ドルで買収したことを明らかにした

2021年1月15日更新:Digital Brosは公式サイトのリリースで,Infinite InteractiveとInfinity Plus Twoを450万ドルで買収したことを明らかにした

2021年1月14日の元記事:505 Gamesの親会社であるDigital Brosは,メルボルンを拠点とするデベロッパのInfinity Plus Twoを買収した

 Infinity Plus Twoは,505 Gamesが発売したRPG「Gems of War」やF2Pシリーズ「Puzzle Quest」の成功を支えてきた存在であり,今回の買収により,同社はフリープレイ市場での地位を確固たるものにしたいと考えています。

買収の条件は明らかにされていない。

Infinity Plus Twoはオーストラリアのデベロッパ,Steve Fawkner氏によって設立され,これまでに30以上のタイトルを制作してきた。Puzzle Questシリーズはこれまでに2億ドル以上の収益を上げており,現在は全世界で3200万人のユーザーを抱えているという。

Fawkner氏は,505 Gamesの経営陣の一員として,引き続きスタジオを率いていく。

Infinity Plus Twoは,イギリスのデベロッパであるDR StudiosとAssetto CorsaシリーズのメーカーであるKunos Simulazioniをすでに所有している505 Gamesの3番目のスタジオとなる。

505 GamesのFree-to-Play部門の責任者であるClive Robert氏は次のようにコメントしています。「IP2は,長年にわたって驚異的な成功を収めてきた実績のあるスタジオです。彼らの創造的なビジョンと豊富な経験は,505 Gamesに大きな力を与えてくれるでしょう」。

「F2P市場は,ここ数年で驚異的な成長と人気の高まりを見せており,当社の成長戦略の重要な要素の一つとなっている。今回の買収は,複数のプラットフォームでF2Pゲームを提供しているサードパーティのリーディングパブリッシャの1社として,社内開発への投資をより強固なものにし,当社が保有するIPのライブラリーを構築するものです」。

※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら



著者: “jp.gamesindustry.biz編集部 — jp.gamesindustry.biz

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ゲーム業界ニュース

【ACADEMY】世代間,プラットフォーム間でゲームの進行状況を共有する方法 –

Mine Sasaki

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AccelByteのRaymond Arifianto氏が,プラットフォームに依存しないクラウドセーブ機能の実装方法についての集中講義を提供している。

 ビデオゲームの基本的な,しかししばしば見落とされている機能は,プレイヤーの進行状況(progression)を追跡することだ。コントローラを置いて,別の時間や場所でゲームを中断したところから再開できることが,ビデオゲームの機能として期待されている。

 プレイヤーの進行状況を保存するには,ゲームがプレイヤーについて覚えておく必要があるすべてのことについて話す必要がある。これには,プレイヤーが最後に訪れた町,アバターのキャラクターレベル,プレイヤーが倒した(倒したままであるべき)敵の数などが含まれる。

 そして,何回剣を振ったか,何回ヘッドショットをしたか,ハーデスで全能の父を何回倒したか,自己ベストタイムなどといった,プレイヤーのデータがある。

【ACADEMY】世代間,プラットフォーム間でゲームの進行状況を共有する方法

 約10年前にさまざまなクラウドセーブ機能が実装され,プレイヤーはクラウド上に進捗状況を保存しておくことで,デバイスからデバイスへ移動した際にそれを再現できるという快適さを体感できるようになった。

 しかし,近年のクロスプラットフォーム化の流れの中で,ゲームがクロスプラットフォームで,あるいは世代を超えてクラウドセーブ機能を実装するための一貫した方法というものはなかった。

 The Witcher 3がクロスセーブに対応したと聞いてファンは大喜びだったが,それはかなり限定的なものであることが判明した。― SwitchユーザーはSteamやGOGを使って進捗をロードして保存できる。しかし現在のところ,XboxやPlayStationなどのほかのプラットフォームをサポートする予定はない。

【ACADEMY】世代間,プラットフォーム間でゲームの進行状況を共有する方法

 また,Overwatch 2のような続編ゲーム間のクロスプログレッションはどのような意味を持つのだろうか? Blizzardは,プレイヤーは2つのゲームでのクロスプレイに加えて, Overwatchからのすべての進歩を持ち運べるようになると約束している。

 この記事では,プラットフォームのクラウドセーブの基本と,プラットフォームにとらわれない機能をゲームにデザインして,プラットフォーム間,あるいは同じフランチャイズ内の異なるゲーム間のプレイヤーの進行を追跡する方法について説明する。

クラウドセーブ

 クラウドセーブは10年ほど前に導入され,SteamやXbox Liveで普及していた
―これにより,プレイヤーは1つのデバイスでゲームをプレイし,別のデバイスでゲームを続けることができるようになった。今日では,ほとんどのプラットフォームで,あるレベルのクラウドセーブが提供されている。誰でも無料なのか,それともプレミアム会員(PSNやNintendo Switch Onlineなど)の機能なのかといった違いはあるが。

【ACADEMY】世代間,プラットフォーム間でゲームの進行状況を共有する方法

●それはどのように動作するのか?
 ほとんどのプラットフォームでは,プラットフォームが提供するAPIを使用してローカルファイルの読み書きを行い,プラットフォームがファイルのアップロードとタイムスタンプの検証を行う。

 たとえば,これはSteam cloud saveの動作だ(参考URL)。「Steam Cloudは,ゲームのための簡単で透過的なリモートファイルストレージシステムを提供します。Auto-Cloud設定で指定されたファイル,またはCloud APIを使用してディスクに書き込まれたファイル(作成,変更,削除など)は,ゲーム終了後に自動的にSteamサーバーにレプリケートされます」

 「ユーザーがコンピュータを変更した場合,ゲーム起動前にファイルは自動的に新しいコンピュータにダウンロードされます。その後,ゲームは通常どおりCloud APIを介してファイルを読み込むか,ディスクから直接ファイルを読み込むことでファイルにアクセスできます。ビデオ設定などのマシン固有の設定は避けてください」

【ACADEMY】世代間,プラットフォーム間でゲームの進行状況を共有する方法

 セーブゲームの利点は,デバイス上のローカルファイルであるため,オフラインのシングルプレイヤーゲームに最適に動作することだ。

 しかし,クライアント側のセーブゲームを持つことには制限がある。

  1. セキュリティと改竄: 独自の暗号化メカニズムをロールアウトできるが,ローカルのセーブゲームはクライアント側の改ざんの傾向がある。つまり,実際にはパワーレベル,ELOレーティング,プレミアム通貨などの重要なマルチプレイヤーデータをローカルセーブに保存することはできない
  2. ほとんどの(すべてではないにしても)プラットフォームでは,タイトルID/アプリIDごとにクラウドセーブを扱う。つまり,ゲームの続編をリリースした場合,それは別のゲームとみなされ,別のタイトルID/アプリIDを持つことになる。また,1つのゲームが別のゲームのクラウドセーブを照会したり管理したりすることはできないため,2つのゲームでゲーム進行を共有することはできない

 これらの制限を回避するために,多くのゲームでは,ローカルセーブに加えてゲームバックエンドにもプレイヤーデータを保存している。

 これにより,特定のプレイヤーデータ(ゲームサーバーのみが書き込み可能なもの)は安全に保たれ,たとえばELOレーティングのように,公平なマッチメイキングに使用される。明らかな欠点は,プレイヤーが値を取得するためにオンラインでなければならないことだ。

【ACADEMY】世代間,プラットフォーム間でゲームの進行状況を共有する方法

プレイヤーの進行を保存するプラットフォームにとらわれないようにする方法

 バックエンド側にプレイヤーデータを保存する基本的なことはお分かりいただけたと思うが,これを拡張して,クロスプラットフォーム,クロスジェネレーション,さらにはクロスタイトルをサポートできる。重要なのは,プラットフォームにとらわれないソリューションを構築することだ。

 プレイヤーが使用しているプラットフォームやデバイス,さらにはタイトルIDに関係なく,プレイヤーを識別できれば,クロスプログレッションを可能にするためのマッピングロジックをバックエンドに構築できる。これについては,GamesIndustry.biz ACADEMYで取り上げられた(関連英文記事)2020年のGDCの講演で説明した(参考URL)。

 アカウント連携と呼ばれる技術を使用することで,バックエンド上に統合されたアカウントを作成して,Steam,PS4,PS5,Xbox One,Series X,Switchなどでプレイしているかどうかに関わらず,ゲームをプレイしているすべてのプレイヤーを識別できる。

 この情報があれば,プラットフォームごとにプレイヤーストレージを分離するか,より統一された戦略を選択するかを決めることができる。

【ACADEMY】世代間,プラットフォーム間でゲームの進行状況を共有する方法

 これにより,ゲーム間のプロモーションやゲームの進行をサポートするための工夫も可能になる。

 これを実現する1つの方法は,複数のゲームで共有されるべきプレイヤーデータを,複数のゲームが読み書きできる独自のパーティションに格納するためにデータを分離することだ。

 一言だけアドバイス:複数のプラットフォームやタイトルにまたがって同じプレイヤーのために統一されたストレージを有効にしたい場合は,バックエンドシステムにSPOP (Single Point of Presence)を実装することを検討する必要がある。

 SPOPとは,ユーザーが一度に1台のデバイスでしかアカウントにログインできず,1台にログインするともう1台がログアウトしてしまうというものだ。これにより,すべての書き込みおよび読み取り操作が安全であることが保証され,同時に異なる場所からプレイヤーの状態を操作するプレイヤーの非決定論的な動作を扱うことはない。

 まとめると,さまざまなプラットフォームが,ゲームが利用できる素晴らしいクオリティオブライフのクラウドセーブ機能を提供している。クロスプラットフォームのゲーム時代に突入した今,さまざまなプラットフォームの制限を回避するために,プレイヤーの進行状況を保存する方法を設計できる,プラットフォームにとらわれないクラウドセーブシステムが必要になることに気づくだろう。


Raymond Arifianto氏は,Xbox,Lionhead,EA,Ubisoftで15年以上にわたってオンラインゲームやプラットフォームの開発に携わっていた。現在は,ライブゲームサービスのワンストップショップであるAccelByteの技術担当副社長を務めている。

※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら



著者: “jp.gamesindustry.biz編集部 — jp.gamesindustry.biz

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