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ゲーム業界ニュース

ウェアラブルEXPO開催,次世代MRデバイスはどんな方式か?  –

Mine Sasaki

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ウェアラブルEXPO開催,次世代MRデバイスはどんな方式か? 

 2020年2月12日から14日にかけて「ウェアラブルEXPO 2020」が開催された。ウェアラブルデバイスの基礎技術から製品までを幅広く取り扱う展示会である。
 ゲームには関係ない技術もあるが,いずれはなんらかの形でゲームでも使われそうな技術も多い。以下では今年の展示で目についたものを紹介してみたい。タイトルにもあるようにMRデバイスを中心としているが,展示会全体として見れば,MRデバイスが中心というわけではないのでそのあたりは注意してほしい。

 なお,以下では,現実の風景にかぶせてCG映像を出すヘッドセット製品を総称してMRデバイスと呼んでいる。

MRメガネ用超小型レーザーユニット

ウェアラブルEXPO開催,次世代MRデバイスはどんな方式か? 

 この展示会のたびに紹介している気もするが,福井大学とケイ・エス・ティ・ワールドの小型レーザーユニットの試作第3弾が展示されていた。これはメガネに内蔵して網膜照射型のMRデバイスを構成する際のキーとなるデバイスの1つだ。
 半導体レーザーユニットから出たRGBのレーザー光線が,DMDデバイスでの反射を経てメガネのレンズ面に投影され,そこで半透過しつつ反射した光が目に入り,直接網膜上に映像を投影する。福井大学では半導体レーザーユニットの小型化を進めており,今回のユニットは,ほぼ(太めの)メガネのツルに入りそうなくらいにまで小型化されている。2017年に取材したときの1次試作が容積で0.561cc,2018年が0.454cc,そして今回は0.141ccである。文句なく小型化されている。

ウェアラブルEXPO開催,次世代MRデバイスはどんな方式か? 

 こんなに小さくして出力は大丈夫なのだろうかと心配する人もいるかもしれない。しかし実際には,人間の目に直接使うには,このサイズでもまだまだレーザーの強度が強すぎるのだそうだ。なんらかの方法で弱めてから利用しなければならないので効率はよくない。単純に大きさで出力が決まるものでもないようだが,低出力化,低消費電力化そしてさらなる小型化はこれからも進められるようだ。
 

QD Laserの網膜照射型デバイス

ウェアラブルEXPO開催,次世代MRデバイスはどんな方式か? 

 さて,こちらはレーザーを使った網膜照射型MR眼鏡の製品版である。先ほどの福井大学さんからすれば,これでは大きすぎるから普通のメガネに入るくらいに小さくするということなのだろうが,こちらは現状の技術で製品化まで進めている製品だ。RETISSA Display IIは,全体としてみればちょっとゴツめのメガネという仕上がりである。全体としては,ポータブルなMRデバイスになっており,メガネ部は有線でプロセッサ部分と接続されている。

 社名から分かるように,本来ならここは量子ドットレーザーを扱っている会社なのだが,この製品では半導体レーザーが使われている。量子ドットというとディスプレイの蛍光体として使われている例が知られているが,自発光もすればレーザーも出す多彩な挙動を示すものである。なんにせよ,今回は半導体レーザーなのだが。

ウェアラブルEXPO開催,次世代MRデバイスはどんな方式か? 

 スカウター的な形状のMRデバイスでレーザー走査式のメリットはピント合わせが必要ないことだ。着用者の視力に関係なく鮮明な映像を表示できる。視野角は26度とそれほど広くはないが,そこそこに大きめな映像が投影される。以前紹介した同社製品は,2024×600ドット程度だったのだが,今回は1280×720ドットの720p解像度のものになっていた。

 実際に体験すると,フラットな部分だと横線系の色ムラもちょっと目立ったが,概ね綺麗な映像を表示できていた。ちょっと意外だったくらいだ。2016年に2世代前の製品を試したことがあるのだが,今回のものは格段に綺麗で目への負担もほとんど感じられなかった。

 この手のデバイスではどれも同じような感じだが,位置合わせはシビアで,ちょっとずれると映像は見えなくなる。今回は標準的に眼鏡をかけた状態ではまったく見えなかったので,常時手で支えながら視聴した。位置調整はかなり柔軟にできるとのことなので,ちゃんと個人ごとに合わせれば問題はないのだろう。
 全国6か所で店頭デモも行われているようなので,公式サイトを見て近くでデモをやっているようなら,一度体験してみるのもいいだろう。

スマホを使ったMRデバイス

ウェアラブルEXPO開催,次世代MRデバイスはどんな方式か? 

 NPO法人ウェアラブルコンピュータ研究開発機構ブースに展示されていた,ハーフミラーにスマホの画面を映して外界の映像と合成してしまえというアプローチのMRデバイスを紹介しよう。
 写真を見てもらうとどんな原理なのかは一目瞭然だろう。ハーフミラーと一体化されたレンズが最大の特徴である。

 スマホの画面を拡大して反射し,現実の風景と重ね合わせるという,大変シンプルな仕組みなのだが,それなりの絵が得られることと,レンズ以外のお金のかかりそうな部分は全部スマホ任せなので低コストでできるというのがウリだ。

 これ以前に,スマートフォンを使って,MR体験ができる段ボール製のゴーグル「だんグラ」というものもあり,こちらは6050円で販売されている(Amazon価格)。ハーフミラーとレンズが別なので,ミラー-レンズ-ハーフミラーとちょっと構造が複雑になっている。比べると新型レンズの効能がよく分かる。



 現在使用できるのはiPhone(6以降)のみのようだが,いちばん小さい機種に合わせて作られているそうで,より大きな画面の機種ではより視野角の広い映像が表示されるとのこと。

 物理的にちょっと大がかりではあるものの,おそらくMRの体験としては最高品質のものが得られる可能性が高い。なにせ,少なくともピーク性能に限って言えば,HololensやMagicLeapに搭載されているプロセッサより最新iPhoneのプロセッサのほうが性能はかなり高そうなのと,画面の綺麗さや視野角など多くの部分で優位だからだ。現在Unity用のSDKが用意されており,まもなくUnreal Engine用のものもリリースされるという。先日行われたハッカソンでは,Hololensとほぼ同じ動きを再現するような作品もあったという(一応,Unityにジェスチャー系のプラグインなどを入れまくればできなくもないけど,それを開発するくらいなら素直にHololensを買ってきたほうがいいだろうとのことではあった)。

ウェアラブルEXPO開催,次世代MRデバイスはどんな方式か? 

 原理的には単純なので,おそらく製品化に当たって問題になるのは,どうやって頭に固定するのかという問題だろう。一応,キットではベルトで頭部に取り付けることを想定しているのだが,スマホの重さを考えるとあまり安定しそうには思えない。

 展示されていたヘルメットへのマウント例が非常に魅力的に見えた。これは米陸軍の訓練用ヘルメットを使ったものらしいのだが,前方に付いたマウントに合わせて3Dプリンタでコネクタを作ったのだという。確かにサバゲー用のヘルメットを探してみると,似たようなものは多く見つかる(暗視ゴーグル用のマウントなのか)。このように取り付けができれば比較的安価にMR用ヘッドセットを調達できるわけだ。
 レンズキットの価格は3000円とのこと。自分たちでソフトを作らなければならないものの,Hololensまでは必要ないけど似たようなことをしたい場合にお安くできるという提案である。
 と,原稿を書いていて気付いたが,当日デモを見たのはだんグラだけだった。ハーフミラーとレンズを一体化したら向こう側の風景も拡大される……まああまり問題はないのかな? 

ハーフミラーのゲーム用MRデバイス:Tilt Five

 さて,スマートフォンを使用したことでお手軽に試せるハーフミラー式のMRヘッドセットを紹介したところだが,なんにしてもちょっと大きすぎると思う人もいるだろう。ほぼ同じような仕組みでコンパクトにまとめて製品化図っているのが,ちょっと前にKickstarterでキャンペーンを行っていた「Tilt Five」だ。私も出資しているプロジェクトである。



 そのTilt Fiveがカラーリンク・ジャパンのブースで実物を展示していたので体験してきた。

 これはボードゲームでの利用を想定して作られたものであり,専用ボードが必須なのだろうと思っていたのだが,会場では反射型スクリーンと位置取得用赤外線デバイスを使って単体で動作させていた。
 製品版ではメガネ側から赤外線を出して,ボードの位置を取得する形式になるそうだが,現在は外部からの赤外線をメガネ側が検出する形式になっているという。

 メガネ自体の装着感は良好だ。形状的にはちょっと上が飛び出ているのだが,装着している側にとってはまったく気になるものではない。とくに重くもないのだが,製品版はさらに軽くなるとのことだった。
 視野角はかなり広い。これを予想以上だった。ほとんど視野の端のあたりまで広がっている。ハーフミラーを使うためか,画調はちょっと淡めだ。

 ムービーではメガネに線はつながっていないのだが,基本的にUSBでPCと接続されるデバイスである(スマホでの利用は可能)。ボードゲーム用に設計したのはよい落としどころかもしれない。複数人でこのメガネをかけてMRボードゲームが可能になっている。なんかやたら楽しそうだ。もちろん,ボードゲームしかできないというわけではなく,会場ではブロックを生成していくサンドボックス的なデモとラジコン風レーズゲームのデモが行われていた。SDKはUnityとUnreal Engineのものが用意されている。

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 メガネのほか,チャッカマンみたいな形状のスティックを利用して操作を行う。ボタンやアナログスティックの付いたコントローラにバーチャル空間とのインタラクト用の突起が出ている感じだ。
 汎用のデバイスでないのは残念だが,SDKは公開されているので,汎用で利用できなくはないのかもしれない。
 カラーリンク・ジャパンは,Tilt Fiveに使われている光学系の部品を提供しているとのことで,Kickstarterでも日本での発送はカラーリンク・ジャパンが行うことになっている。ゆくゆくは国内販売なども視野に入れているようだ。Wi-Fi機能もあるので一応確認してみたが,技適も大丈夫なはずとのことであった。

ウェーブガイドデバイス

ウェアラブルEXPO開催,次世代MRデバイスはどんな方式か? 

 網膜照射,ハーフミラー式と,2方式のデバイスを紹介してみたわけだが,今回の会場でもっともインパクトの強かった表示デバイスは,Dispelixの製品だった。このフォンランド企業は,眼鏡のレンズに相当する部分に映像を投射するデバイスのデモを行っていた。デモ機はメガネ形状というわけではないが,レンズのすぐ横に光学エンジン(これは他社製とのこと)が入っており,比較的簡単にメガネにできるはずの技術である。

 現在市販されているものは視野角30度のDPX30°だが,試作されているものも試させてもらった。こちらは4:3画面で視野角40度,16:9画面で視野角50度にもなるデバイスだった。かなり広く,しかも画像が超鮮明なのだ。まだ視野の端まで届くような大きさではないものの,非常に可能性を感じさせるデバイスである。

普通のカメラで覗き込んだところ。あまり綺麗に撮れてはいないが,この手のデバイスで覗き込んで撮影できること自体が貴重
ウェアラブルEXPO開催,次世代MRデバイスはどんな方式か? 

 使われている技術は,Diffractive waveguides。Google翻訳さんによると「回折導波路」,Bing翻訳さんによると「回折波導導導体」(どうすればこんな単語が出るんだろう)。
 Hololnsで使われているものと同等な技術である。Hololensよりも綺麗じゃないか? と,ちょっと驚いた。Hololens 2の視野角が52度とのことなので,新型はほぼそれに近い体験ができるデバイスを構成できる。
 Hololensとの違いを聞くと,明快な答えが返ってきた。Hololensは3板式で3枚の素子を重ねているのに対し,これは1枚でフルカラーに対応しているのだという。製造プロセスはほぼ一般的な半導体と同じとのことで,単純に枚数分のコストが下がるほか,画質も向上しているとのことだ。
 現在は30度対応の製品が商品化されてはいるものの,まだ具体的な価格は付いていないという。半導体と同じで量産されるようになればコストも下がる。当面は業務用デバイス向けになるだろうが,将来的にはコンシューマ向けも目指したいとのことだった。

より目に近い位置からのスマートフォンによる撮影例。非常に映像が鮮やかだ
ウェアラブルEXPO開催,次世代MRデバイスはどんな方式か?  ウェアラブルEXPO開催,次世代MRデバイスはどんな方式か? 

指の動きを取れるMollisen Hand

 台湾企業Feel the Sameが出展していたMollisen Handは,
 関節部分に伸び縮みを検出するセンサー,指先に圧力センサーがあり,振動でのフィードバック機構も内蔵されている。片手ごとに10か所のセンサーが付いており,指の動きを取っている。ということは,第一関節は単独では取っていないパターンか。



 ワイヤレスであることが影響していると思われるが,映像を見ると,操作から5フレームの遅れが確認できる。そのままゲームで使うのにはちょっと厳しいが,指のモーションを取るような用途には意外とちゃんと使えそうに思われた。ワイヤードにして遅延をなくせば,VR/MR用の「手」としてかなり有望かもしれない。すでに市販されており,599ドルからとなっていた。センサーキットのみの販売も行われている。
 VRやゲーム用に使えそうな技術ではあるが,現状では指の動きを取るだけで手の位置自体はトラッキングされていない。機能的に考えると,手の位置あたりまではトラッキングされているVtuberに装着することで表現力を上げるようなことが主体となるのだろうか。

e-Rubberを使った触覚デバイス

ウェアラブルEXPO開催,次世代MRデバイスはどんな方式か? 

 これはウェアラブルEXPOの出展ではないのだが,隣で行われていたロボテックスの豊田合成ブースでは「e-Rubber」による触感デモが行われていた。e-Rubberについての詳細は,こちらの記事をご覧いただきたい。

 会場では,SIGGRAPHで西川氏が体験した水風船のデモとMagicLeapを使ったMRデモが行われていたので,今回はMRデモを紹介しよう。

 親指と人差し指にそれぞれe-Rubberのベルトを巻き付け,頭にはLeapMotionを装着する。いくつかのデモが詰め込まれており,まず,空間に浮かんだピアノの鍵盤に触ると,当然音が出て押した触覚がe-Rubberで再現される。
 次に,空間にいくつか並んだスライダーのつまみをつかむと,それぞれ違う触感が体験できるというデモでは残念ながらうまくつかめなかった。これはLeap Motion側の問題ではあろうが。最後に箱の中に入った球体を取り出して握ると,それが心臓のように脈動する。
 全体に振動といえば振動なのだが,それなりに説得力のある触感として再現されている。言葉で説明するのは非常に難しい。

ウェアラブルEXPO開催,次世代MRデバイスはどんな方式か? 

 e-Rubberでは6〜7%の収縮を実現可能だそうで,カチっとした触感ではなく,柔らかいものの触感再現を得意としているという。
 いろいろ夢が膨らむデバイスなのだが,駆動電圧が1000V程度なので,昇圧できたとしても携帯用などには向かないかもしれない。

 今回使用したものはe-Rubberを10層重ねたものである。同社が目指しているのは,さらなる薄型化,つまり薄くして積層度を上げるといった方向だ。これにより駆動電圧が低くなり,伸縮率も大きくなるという。表現力が増して,扱いやすくなるわけで今後の発展にも大いに期待できそうだ。



著者: “jp.gamesindustry.biz編集部 — jp.gamesindustry.biz

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ゲーム業界ニュース

【ACADEMY】誇大広告を信じてはいけない:プレイヤーエンゲージメントの基本ガイド –

Mine Sasaki

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My.GamesのAlexey Izotov氏が,GamesIndustry.biz Academyのために誇大広告を生み出すことのバランス感覚について語ってくれた。

 大手パブリッシャであろうと,若いインディーズであろうと,ファンが新作の良し悪しを決めるということは否定できない。マーケティングの目標は常に話題性を生み出すことだが,ファンからのフィードバックがすぐに得られるこの世界では,誇大広告を出すことは危険なバランスをとることでもある。あまりにも多くのことを約束しすぎると反動に直面したり,約束が少なすぎて,あなたが愛情を込めた労作がマーケットプレイスのフラッシュセールで終わるのを目の当たりにしたりすることもある。

 我々は皆,このような状況をオンラインで見ていた。Call of Duty: Warzoneのようなサクセスストーリーの裏には,無数のゲームのクラッシュと炎上の例があるのだ。

誇大広告を生み出すことは危険なバランスをとる行為だ

 新作タイトルがファンの目にヒーローから悪役になるのを防ぐにはどうすればいいのだろうか? それは,プレイヤーとのコミュニケーションだ。My.Gamesでは,プレイヤーとのコミュニケーションを会社の重要な柱の1つと考えている。開発から発売まで,ファンの皆様とコミュニケーションをとるための計画を立てておくことは,潜在的な災難を避けるための最良の方法だ。

 ゲーム業界,そして世界は厳しい時代を迎えている。ゲームへの需要が高まるにつれ,ファンからの注目度も高まっている。今こそ,自分の可能性を最大限に活用し,オーディエンスに語りかけ,強力なコミュニティを構築する絶好のチャンスだ。

My.Gamesが発売したCrytekのF2PシューティングゲームWarface
【ACADEMY】誇大広告を信じてはいけない:プレイヤーエンゲージメントの基本ガイド

グローバルマーケティング101

 基本的なことから始めよう。あなたの地域やタイムゾーン,どのようなソーシャルメディアを使用しているかなど,簡単なことは間違いなく知っているだろう。これらの市場はどのように似ていて,どのように違うのだろうか? あなたのゲームのプレイヤーは誰で,何が彼らを興奮させるのだろうか? 当たり前のように聞こえるかもしれないが,基本的なことを完璧にしておくことで,ゲームを発表したあとの管理が格段に楽になる。

 黄金律は,これまで例を見てきたように,提供できないものは何も約束しないことだ。あるスタジオが新しいゲームを発表し,最終的に何が可能になるかを示しつつ,あたかもローンチ時にそのすべてが利用可能であるかのように提示すると,結果としてローンチ時には面白さに欠け,スタジオはダメージ制限モードに入り,ときには長期的な風評被害を受けることになる。

黄金律は,実現できないことを約束しないことだ。

 当社は,当社のスタジオの1つであるBooming GamesのMMO Conqueror’s Bladeを支援した際に,このルールを守った。

 当社は中国での発売直前にこのゲームの権利を購入した。当社は間接的に開発に関与していたが,Booming Gamesのチームに第一印象や意見を伝えることができた。発売後,我々はコミュニティから,ゲーム自体は楽しくて魅力的だが,ミッションには微調整やアップデートが必要だというフィードバックを受けた。我々はコミュニティの意見に耳を傾け,グローバルシーズンシステムを開発した。

 ライブサービスゲームとしてのConqueror’s Bladeがどのように動作するのか,現実的なアイデアを提供することで,各アップデートで何が可能になるのかをコミュニティに伝えることができた。そのフィードバックをもとに,我々はシーズンシステムを開発し,各地域でいつアップデートが行われるかを示すロードマップとともに,ゲームにグローバルアップデートを導入した。このように,プレイヤーの期待値を管理することで,ネガティブな反発を防ぐことができたのだ。

Booming GamesのConqueror’s Blade
【ACADEMY】誇大広告を信じてはいけない:プレイヤーエンゲージメントの基本ガイド

透明であること

 これであなたはステップ1に沿って,ローンチ時に何が利用可能になるかを現実的に予想して発表したことになる。今こそ,ソーシャルメディア上のファンのコミュニティとの交流を深めよう。透明で明確なコミュニケーションを維持することは,あなたのコミュニティとの強い関係を発展させるために最も重要な部分であり,誇大広告による被害を防ぐことができる。

 発表が行われたら,希望や夢を共有したくなることがあるだろうが,発表と同じように,機能がさらに先に変更された場合には,過度のプレッシャーがかかることがある。ゲーム開発のダイナミックな性質は,プロジェクトが常に変更される可能性があることを意味するが,コミュニティをあなたの旅に参加させておくことはできる。これは,開発のロードマップを知らせたり,新しいレベルや新しいキャラクターのスクリーンショットを提供したり,独占的なゲームプレイを盗み見したりすることと同じくらい簡単なことだ。

 これは,Pixonic スタジオの最新モバイル ゲームDino Squadでお手伝いしたときの話だ。このゲームは,ゲームジャムのアイデアから始まったもので,1980年代の非常にニッチなアニメシリーズ,Dino-Ridersをベースにしている。Pixonicは3月下旬にこのゲームを発表したが,プレイヤーに何ができるのかを正確に知ってもらうために,発売に向けてのロードマップの概要を明らかにした。

Dino Squadは80年代のアニメシリーズDino-Ridersをベースにしている
【ACADEMY】誇大広告を信じてはいけない:プレイヤーエンゲージメントの基本ガイド

 新しい地域でのローンチや続編,DLCアップデートなど,新しいプロジェクトに取り組んでいるのであれば,コミュニティと話をして,彼らが何を望んでいるのかを知ることで,リリースへの投資を感じてもらうことができる。

 これはLost Arkのコミュニティで行ってきたことだ。このゲームは最初に韓国でリリースされ,次にロシアでリリースされたが,これはMMOを立ち上げるうえで非常にユニークなアプローチだ。通常,アジアのスタジオのゲームは,完全なグローバルローンチの前に現地市場でテストを行ってゲームを完成させるが,我々は中国や日本よりも先にロシアでLost Arkをリリースした。

透明で明確なコミュニケーションを維持することは,強力な関係を築くうえで最も重要なことだ。

 しかし,最初から,韓国以外の国からもプレイしているユーザーがいることにすぐに気が付いた。Lost ArkはMMOコミュニティで広く議論されており,プレイヤーは手に入れる前に内容を詳細を知っていることが分かった。我々は透明性を保つ必要があったので,コミュニティの最も活発なメンバーのために,ライブストリームやスタジオ訪問を通じてユーザーとの対話を行った。そしてプレリリースからローンチ,そしてローンチ後の数か月までのロードマップを見せた。

 今日に至るまで,Lost Arkのプレイヤーは,6か月前にゲームで何が起こるかを常に知っている。今でもいくつかの発表でプレイヤーを驚かせることはあるが,それは滅多にないことだ。ロードマップをコミュニティと共有し,フィードバックをもらうことで,コミュニティを巻き込みやすくしている。

 何か問題が起きても,真っ暗になってはいけないということを覚えておいてほしい。優れたコミュニティマネージャーは,ファンが知る必要のあることと知らないでいいことを決める手助けをしてくれる。しかし,困難な状況では,話す前によく考えてから話すようにしよう。

【ACADEMY】誇大広告を信じてはいけない:プレイヤーエンゲージメントの基本ガイド

ルールを破る

 これらの基本的なルールを学ぶことは,いつルールを破るべきかを知ることにもなるので,重要だ。ルールを破ることはリスクがあるが,我々は市場戦略を見てきて,正しく実装されている場合,それが機能することを知っている。あなたが計画し,あなたの聴衆を知っている限り,それは大きな報酬を得ることができる。

 この典型的な例として,My.Gamesで成功裏に利用しているのが,サプライズローンチだ。サプライズローンチは,あなたのゲームにジャンルを変えるチャンスを与えてくれる。何か月もかけてコミュニティを構築し,期待を集めるのではなく,完全に完成した製品を市場に出すことで,純粋な好奇心からオーディエンスを惹きつけることができるのだ。インフルエンサーのサポートを受けることができれば,彼らのファンも自然とゲームを試してみたくなるだろう。

サプライズローンチは,あなたのゲームにジャンルを変えるチャンスを与えてくれる

 My.Gamesでは,Nintendo Switchで大人気のフランチャイズWarfaceで,この戦略を用いて成功を収めた。2月には,Switch Onlineの契約をしていなくても,すべてのプレイヤーがプレイできるように準備し,完全に抜き打ちでWarfaceを発売したのだ。市場には,CryEngineを搭載したゲームがSwitchにはなく,Warfaceのようなゲーム性のゲームがないというギャップがあることに気付いた。我々は,サプライズで発売することで常識を覆し,インパクトを与えるチャンスだと考えたのだ。

 Warfaceコミュニティからの反応は驚くべきものだった。発売から1か月後,Warfaceはプラットフォーム上の登録プレイヤー数が100万人に達し,あっという間にプレイ時間の合計が83000日に達した。

 発売後,我々は,我々のお気に入りのアプローチ,つまり透明性に戻った。発売以来,我々はすべてのプレイヤーにWarface Switchのロードマップを詳細に説明し,新しいDLCや新しいマップがいつ配信されるのかを含め,プレイしていただいた。実験するのは良いことだが,基本を忘れてはいけない。

大胆に,しかしスマートに

 開発計画を常に動的なものにし,ゲーマーが何を望んでいるのかを聞くことで,ローンチ時に提供されるゲームを現実的に予想できるようになった。今,これまで以上に重要なのは,プレイヤーとのコミュニケーションを図り,プレイヤーが製品に興味を持ち続けられるようにすることだ。だからこそ,このような不透明な時代には,4つの基本ルールを忘れないようにしよう。

  1. 基本を完璧にする
  2. 調査をする
  3. 聴衆を知る
  4. 対話を明確かつオープンに保つ

 そして,最も重要なルールを忘れてはいけない。 ― それらを破ることだ。ちゃんと管理されたリスクを負うことで,可能な限り最高のマーケティング戦略を立てることができるのだ。


Alexey Izotov氏は,2015年からMy.Gamesのグローバルパブリッシングの責任者を務めている。彼の部門は,NetEase,Smilegate,Booming Gamesなどの業界のリーダーたちと肩を並べて仕事をしている。CISにおける同社の主要プロジェクトの中には,Warface,PUBG,Perfect World,ArcheAge,Lost Arkなどのタイトルがある。



著者: “jp.gamesindustry.biz編集部 — jp.gamesindustry.biz

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Lego Super Marioを作るのに5年かかった理由 –

Mine Sasaki

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「たった1つだけ依頼されたのは,この2つの会社にしかできないことをすることでした」

 ファミリーエンターテインメントのアイコンであるLegoと任天堂が,これまで一緒に仕事をしたことがなかったというのは,実は驚くべきことだ。

 Warner BrosのさまざまなLegoのビデオゲームは,任天堂のゲーム機で大ヒットしたサードパーティタイトルの中でもとくに選ばれているが,任天堂のキャラクターは,おもちゃ会社にとってライセンスの金鉱であることは長い間証明されていた。この2つのブランドは明らかにマッチしており,Legoと任天堂がスーパーマリオのプロジェクトでコラボレーションしたというニュースには興奮したものだった。

 しかし,このプロジェクトは誰もが予想していたものではなかった。レゴが,フィギュアのブリスターパックや巨大なピーチの城を作るといったブランドセットを作るのは簡単だっただろうし,おそらくかなり儲かるものになっただろう。マリオや仲間たちを主人公にしたLegoのビデオゲームも考えられた。

「約8つのアイデアがテーブルに持ち込まれ,すべての具体的な方向性が示されました」

 しかし,どちらの企業も分かり切ったものには興味がなかった。その代わりに,Legoのスーパーマリオは,おもちゃとインタラクティブなエンターテイメントが融合した異色の作品となっている。スーパーマリオメーカーの物理的なバージョンのようなもので,家族が自分のレベルを作り,動きや着地したブロックに反応するインタラクティブなおもちゃのマリオで遊び回るというものだ。

 「最初の話が始まったのは2015年の夏で,経営陣の上層部が集まり,協力すべきかどうかについて話し合ったのがきっかけでした」と,LegoのデザインマネージャーJonathan Bennink氏GamesIndustry.bizに語っている。「そのレベルでは,ほとんどの場合,価値観や世界に何をもたらしたいか,モラルの面で一致しているかどうかということが話題でした。その後,8つのアイデアがテーブルに持ち込まれましたが,どれも具体的な方向性を示したもので,そのうちの1つがインタラクティブなフィギュアのアイデアだったのです。当時はマリオだけでなく,さまざまなアイデアがありました」

 「任天堂とLegoの経営陣の両方がそのアイデアに投票し,最も多くの票を集めたのがインタラクティブフィギュアでした。
というのも,ラインナップの中で最も独創的なものの1つだったからです。これまで両社がやったことのないものでした」

Legoのデザイナー,Jonathan Bennink氏
Lego Super Marioを作るのに5年かかった理由

 氏は続ける。「私のデザインチームに与えられた唯一の要件は,この2つの会社でしかできないことをすることでした。これはLegoの製品ですが,任天堂の製品でもあります。これは普通のことではありませんでした。両社には多くのファンがいて,以前からこういうのを求めていたので,もう少し待ってくれるかなと思っていました。我々は新しいものを提供したいと思っていたのです」

 Bennink氏はビデオゲームの世界に精通している。彼は,Lego Dimensionsのチームの一員だった。このプロジェクトは,2年間にわたって実施されたLegoのおもちゃを生活の中に再現するプロジェクトで,批判的な成功を収めたが,商業的には挑戦的なものだった。Dimensionsがおもちゃをゲームの中で命を吹き込むものであったのに対し,Lego Super Marioはその逆を行っている。

 「おもちゃから命へというよりは,命からおもちゃへと考えているからです」とBennink氏は同意する。「我々はLegoブロックに命を吹き込んでいると言えるでしょう。これは間違いなく目標でした。子供たちがビデオゲームとLegoが大好きなのは分かっていますが,それらを組み合わせる方法を見つける……そこに魔法があるのです」

「Legoの製品ですが,任天堂の製品でもあります。これは普通のことではありませんでした」

 「Dimensions でやったことは,最初の一歩としては良かったのですが,建物を作ったあと,プレイヤーがビデオゲーム機を使うのはそのときだけです。このために,我々はコアとなるプレイループが実際にブロックの中で起こるように意識して確認しました。常に両手でLegoブロックを触っていて,非常に直感的にプレイできるようにしたのです。マリオのアップデートをダウンロードして,遊び方やレベルのインスピレーションを得ることができるコンパニオンアプリもありますが,これはすべて遊びを引き継ぐというよりは,遊びをサポートするためのものです」

 「我々は,アプリ内でレベルを完成させなければならないというコンセプトを試し,子供たちはそのような方法で構築していましたが……,子供たちはアプリ内でレベルを完成させていただけでしたので,構築の楽しさや軽快さが失われてしまっていました。そこで,ここでの楽しみは,創造性を発揮して構築することだと考えました」

 「これは,我々はハードな方法で学ばなければなりませんでした。我々はすべてをスクラップにして,また始めたのです。しかし,やりました。学びましょう」

 Lego Super Mario Collectionへの 5 年間の旅には,放棄されたコンセプトが散りばめられている。最大の課題は 「LegoのDNAと任天堂のDNAを どう融合させるか」だったという。

Lego Super Marioは 子供と家族のために特別にデザインされている
Lego Super Marioを作るのに5年かかった理由

 「かなり早い段階で,インタラクティブなキャラクターが欲しいと思っていましたが,どうすればいいのでしょうか? 最初に,子供たちがフィギュアを持って部屋の中を走り回って,コインを集めたり,ジャンプしたりできるモーションゲームを作りました。子供たちは興奮していましたが,我々がそれを発表したところ,経営陣からは『いいね,でもなんでLegoでやるんだい?』と言われました。Legoは,自分の創造性を発揮して作るものです。インタラクティブなフィギュアを作るというアイデアがあると言ったところから,なぜそれがLegoにとって意味のあることなのか? これが最大の課題でした」

 「そして,最初から最後まで,作るものは何でもレベルになるというアイデアを考え出したのです。そして,レベルでコインを集め,時間制限,克服すべき課題へと発展していきました……」

 氏は続ける。「これらの技術的なおもちゃの多くは,最初の1週間は多くの魅力を発揮しますが,その後はどうなるのでしょうか? 長持ちさせるには,さまざまな方法があります。我々は,マリオのために何かを作って試してみたいという内発的な動機付けが,最もLegoらしい方法だと感じています。そして,それを家族や友人,オンラインで共有して,他の人たちに刺激を与えます。そして,また作り直したくなるのです」

「複雑なレイヤーを追加するのではなく,プレイしていて気持ちよくなるようなシンプルなことを追求しました」

 「もちろん,プレイレシピを考えなければなりませんでしたが,すべてのゲームシステムを直訳することはできません。たとえば,スタートとゴールを隣り合わせにしてレベルを終わらせることもできます。ゲームでは,人が何かをするのを止めたり,ゲートを作ったりできますが,Legoの場合は好きな順番で何でもできるのです。最初は,マリオが特定の色のところに行かなければならないゲームにしたこともありましたが,ボードゲームのようにマリオが何をすべきかを指示していたので,それでは面白みがなくなってしまいました」

 「我々はジェスチャーやモーションをたくさん持っています。任天堂は『なんで歩くだけで楽しくなるようにしないんだい?』と言ったのです。そこで約8週間かけて,マリオを歩かせました。左から右に歩けるようにすると,彼は反応します。ジャンプも同様です。小さなジャンプをすると半分の音になり,中程度のジャンプをするとこのような音になり,高くジャンプすると大きな音になったりするのです。ですから,何層もの複雑なレイヤーを追加するのではなく,単純にプレイしていて気持ちが良いと感じられるようなことを追求したのです」

 マリオを動かして楽しむだけでなく,Bennink氏は,子どもたちにご褒美を与えるための最良の方法を学んだ。Bennink氏が見せてくれたのは,パックンフラワーのスライダーで,ユーザーはパックンフラワーに触れずに左から右へと移動することが求められる。敵のいずれかに触れると時間的なペナルティがあり,一定期間コインを集めることができない。当初は失敗した場合の罰則が厳しくなっていた。

パックンフラワーのスライダーは数あるセットの中の1つだ
Lego Super Marioを作るのに5年かかった理由

 子供たちがマイナス15コインでゴールして泣きそうになるような状況もあったという。「ですから我々は,罰を与えるのではなく,正しい行動を刺激することを学んだのです。しばらく植物に触らずに行くと,同時に2枚のコインがもらえて,3枚のコインがもらえます…………。つまり,罰を与えるのではなく,上手になって正しい行動を刺激することを学んだのです」

 Bennink氏は,スーパーマリオブラザーズの元祖の一人である任天堂のベテラン手塚卓志氏とこのプロジェクトで密接に協力したという。 実際,単純なライセンスパートナーではなく,任天堂は制作過程でハンズオンを行っている。

 「実践的というのはとてもいい言い方ですね」とBennink氏は笑う。「彼らは何をするにしても情熱的です。彼らは何よりも最終的に消費者が何を感じるかを気にしていました。彼らは,最初のスケッチからプレイコンセプトの作成に関わっていました。ときにはプロトタイプを作ってくれたり,我々が作ったりして,それを何度も往復させていた。彼らは,プレイが何になり得るかという本質的な思考を本当にしてくれました」

 「彼らは技術面でも協力してくれました。我々はセンサー技術を一緒に開発し,今では市場に出すための手助けをしてくれています。パッケージングや落下テストを含めて,すべてのことを密接に行ってきたというのは,Legoにとってかなりユニークなコラボレーションでした。プロトタイプでは,6000回も落下させていました」

Lego Super Marioを作るのに5年かかった理由

 氏は続ける。「もちろん,(Lego Marioを見せ)こいつもいました。アイデアから,このキャラクターが承認されるまでには,1年以上かかっています。マリオは四角いので,ファンキーな見た目をしています。それは彼の中に技術があるからです。テクノロジーは四角くなりがちで,電池なども四角くなりがちですが,伝統的なLegoも四角くなっているので,ぴったりだと思いました。それから帽子……マリオの帽子はとても重要で象徴的なものなので,この形にする必要がありました。また,はみ出している彼のお腹は,実はLegoの車のボンネットの形をしています。この小さな髪の毛は,1×1のLegoの形をしています。Legoの要素でマリオを作ってみたのです」

 Lego Super Marioは,Legoやマリオの大人のファンのために作られた商品ではない。ファミリー向けの商品だ。そのため,価格を適正なものにすることが大きなプレッシャーとなっていた。センサー技術は,バーコードと基本的な光学センサー(RFIDチップではなく)を組み合わせたもので,価格を抑えるために,マーケティングとデザインの間では,どのような機能が最終的に裁断室の床に置かれるべきかについて,絶え間ない争いがあったという。譲歩をしても,スターターセットは60ドルの価格帯に留まった。これは拡張前の話だ。

 しかし,Bennink氏は,この製品があらゆる種類のファンに受け入れられ,Legoと任天堂のさらなるコラボレーションにつながることを期待している。

 「我々の世代,ミレニアル世代や40代の世代は,マリオと一緒に育ちました」と氏は語る。「彼らには今,子供がいますので,Legoと同じように,本当の意味でのファミリー向けのIPです。我々は,家族で楽しめるものを作れているように心から願っています。子供たちは,ママやパパが遊ぶためのレベルを作ることに1日を費やしたいと思っていると思います。しかしもちろん,一部の大人のファン,つまりコレクターが期待していたものではないことは分かります。しかし,これまでのところ,反応はポジティブです。人々は新しいことをやっていることを評価してくれているのです」



著者: “jp.gamesindustry.biz編集部 — jp.gamesindustry.biz

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ゲーム業界ニュース

Opinion:COVID後の業界に大きな変化を期待してはいけない –

Mine Sasaki

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パンデミック後の抜本的な変化への期待は大げさである。 ― 対面での作業はデフォルトのパラダイムのままであろう。

 COVID-19パンデミックによってもたらされた巨大な混乱に対する初期の反応の中で最も一般的なものの1つは,日常回帰への強いバイアスであった。―この状況には終着点があり,それによってすべてが以前とまったく同じように正常に戻るという信念や仮定である。

 我々は今,その反応の一部を過ぎようとしている。正常性への復帰は遅いだけではなく,以前の世界とはまったく違う「新しい」正常性への復帰であることが受け入れられるようになってきている。しかし,いくつかの点では,振り子はまた,反対の方向にあまりにも激しく揺れている。我々は,日常回帰への信仰から,COVID-19以降は以前とは何一つ依然と同じではなくなるというパラダイムシフトへの熱烈な信念へと移行した。

 この感覚はさまざまな形で表れているが,ゲーム業界をはじめとする多くの業界では,在宅勤務を余儀なくされてきた企業で新たな標準としてそれが固定化され,多くの人は業界の出張や大規模な対面イベントは永遠に歴史のゴミ箱に捨てられてしまったと感じていることに最も強く表れているのではないだろうか。ここで提案されている未来の理想は,業界の大部分がほぼ常にリモートで仕事をしている一方で,大きなイベント(トレードと消費者に焦点を当てたもの)はオンラインで行われているというものだ。ここ数週間,私はオフィススペースを持たずに本格的な開発スタジオを運営するという非現実的な議論を耳にしたり,ビデオストリーミング技術によって物理的な会議や大規模な出張の必要性がなくなったことについての考察を目にしたりした。

 提示されている未来の理想は,業界の大部分の人々が常にリモートで仕事をしているというものだ。

 今日のテック業界で最も地に足の着いた現実的な人物の一人であるMicrosoftのatya Nadella CEOが,ポストCOVIDの世界のより突飛なビジョンに少し冷や水をかけているのを見たのは,少し新鮮だった。Microsoftは人気のクラウドプラットフォームとリモートワークコラボレーションツールを運営しているにもかかわらず,Nadella氏はリモートワークが長期的に支配的なパラダイムになるという考えには納得していない(関連英文記事)。これはより一般的な仕事の話をしているのだが,氏の言葉はゲーム業界の特定のニーズの文脈では非常に意味のあるものとなっている。

 確かに,パンデミックの影響で企業はテレワークの可能性を受け入れざるを得なくなったが,それはある程度,このアイデアに対する非論理的な抵抗感を克服し,管理者が効果的なアプローチであることを受け入れるようになったのだろう。多くの企業やチームが初めて大規模なリモートワークに挑戦し,プロジェクトが捗ることを発見しており,将来的には従業員にテレワークのための追加の柔軟性を提供する企業も出てくるだろうと期待するのは無理のないことではない。

 しかし,どちらかといえば,この大流行は,テレワークが効果的に機能しなくなる,かなり深刻な崖っぷちも明らかにしている。数週間,数か月が経つにつれ,チームはより多くの問題に遭遇し,一部のチームは他のチームよりもうまく適応しているが,多くの場合,仕事のスケジュールや出荷はますます遅れるようになっている。

今回のパンデミックでは,テレワークが効果的でなくなってしまう深刻な崖っぷちも明らかになった。

 チームが物理的な場所で仕事をすることには,テレワークではまだ効果的に再現できない機能がいくつかある。VRやARはこの多くを変えるかもしれないが,それは,終日着用できるような快適で健康的なヘッドセットを手に入れられるかどうかにかかっている。これは遠い目標だ。これらの欠陥は,現在は「みんなで一緒にやっています」というオーラによって,人々が無限に続くZoomミーティングやリモートワークのさまざまな不便さへの不満をうまく払拭できるようになっているのだが,パンデミックが緩和されてテレワークが厳格な要件でなくなると,さまざまな不満,速度低下,摩擦が前面に出てくるだろうということだ。

 その他の問題は,パンデミックでの仲間意識が無限に蓄積されていても克服できていない。チームがオンラインで効果的にブレインストーミングを行ったり,国内のブロードバンド接続で大規模なデータ転送を伴う大規模なアセットやその他の作業を行ったりすることがいかに困難であるかという現実は,いくらニヤニヤして耐えようと思っても変えることはできない。
 この2つは,テレワークの可能性と限界の真っ只中にあるゲーム開発の分野にとって,大きな考慮すべき点だ。時宜を得た例として,最近発表された Unreal Engine 5 で言及されている生のアセットの大きさを考えてみてほしい。また,隣の家のティーンエイジャーが BitTorrent を開くたびに Netflix のストリームがレゴ ムービーのように見えてくるブロードバンド接続で,アーティスト,アニメーター,デザイナーがこのサイズのアセットをどれだけ効果的に共同作業できるかを考えてみてほしい。



 もちろん,とくにインディーズのような小規模なゲーム開発チームがオンラインで効果的に仕事をできることは言うまでもない。人気のあるインディーズ作品の中には,同じ国はおろか,同じオフィスにすらいない人たちが開発したものが数多くある。しかし,それらのプロジェクトのコンテンツ制作やイテレーション作業のペースは,現代の高予算ゲーム開発に求められるものとはかけ離れていることが多い。

 プロジェクトにデベロッパが追加されるたびに,複雑化するネットワークの中でもう1つのノードとなり,コラボレーションツールへのストレスが増大し,チームのコミュニケーションが直線的ではなく対数的になって開発のボトルネックになる可能性がある。大規模なプロジェクトでの膨大な量の開発は,迅速なコラボレーションによる反復作業に依存しており,オンラインでの作業が大きな障害となる可能性がある。

デベロッパのための知識共有の機会としてのカンファレンス環境を置き換えるのは非常に困難だ。

 しかし,これはCOVID-19によって強制されてきた変化のいくつかが通用しないということを言っているわけではない。Nadella氏は,企業が築き上げ,現在消費している社会資本の観点から話をした。―本質的に,職場やチームをまとめている社会的な「接着剤」は現在枯渇しており,補充されることはないと主張しており,これはポストCOVIDの世界ではこの「新しい」現状維持の程度に限界があることを意味している。そして,標準的なオフィス内での週単位の労働が,社会資本としてのこれらの埋蔵量を回復する唯一の方法であり,それを必要とするスタッフにとっては,ある程度の柔軟性ができることが,パンデミックの肯定的な結果である可能性が高いのは言うまでもない。

 しかし,どの程度の大きな変化が見られるかは,パンデミックが実際にスタジオや企業のワークスケジュールにどの程度影響を与えるかに大きく左右される可能性が高く,ゲーム業界への最終的な影響を見積もるのは時期尚早である。Microsoftとソニーは,COVID-19が自社のソフトウェアリリーススケジュールに与える影響がどれほど小さいかについて強気の予想をしているが,注目すべきは,両社とも今年発売予定の新しいゲーム機を持っていることだ。現在Switchのサイクルの中盤にある任天堂は,ウイルスによる混乱でリリーススケジュールで深刻な課題に直面していることを認めており(関連英文記事),むしろ地に足がついているように感じられる。

 オフィスに出かけたり,スタジオにチームを集めたりすることがすぐにはなくならないとしても,業界内での出張という点では,より大きな変化が見られるかもしれない。この分野全体 ―継続的な出張と主要な国際会議やイベントの両方― は,多くの企業が何年にもわたってより批判的に検討してきたものだ。COVID-19は,ウイルスよりもずっと前からの流れを変えるきっかけになるかもしれない。

GDCや類似した地域のデベロッパ向けカンファレンスで提供される学習と共有の機会は,オンライン上で簡単に複製することはできない
Opinion:COVID後の業界に大きな変化を期待してはいけない

 もちろん,対面は効果的に代替できないことではある。このパンデミックによって,マネージャーが1日か2日,リモートスタジオをうろついても,チーム自身が日常的に共有環境で結集しているほうが,はるかに重要な社会資本の構築機能を果たすという感覚が定着したのは間違いない。E3のような高価なお祭りでの大規模な旅行が何を意味するかについては,大きな変化がない限り,現状に戻るとは考えにくいのは確かだ。

 とはいえ,すべての出張がカードから外されると言っているわけではなく,ここでもCOVID後の世界が根本的に異なることを期待しすぎているように思う。多くの企業の出張ポリシーが見直され,多くの出張が見直されることになるだろうが,イベントの機能の中には,日常のスタジオ環境と同じように,対面での対応が重要な役割を果たしているものもある。

 たとえば,GDCのようなカンファレンスや知識に焦点を当てたイベントは,今日行われているトップレベルでのやり取りではなくても,開発やパブリッシングのランクを経て,明日の取引や機会の基盤となる関係が構築されており,業界のネットワーキングという点で強力な役割を果たしている。デベロッパのための学習と知識共有の機会としてのカンファレンス環境自体は,不可能ではないにしても,ある種のオンラインに置き換えることは非常に困難だ。GDCや他の地域のデベロッパ向けカンファレンスのようなイベントが,COVID後の秩序の中で,過度の出張による水の泡と一緒に捨てられてしまったら,業界は膨大な量の価値と機会を失うことになるだろう。

 COVID-19後の業界は,確かにある程度違ったものになるだろうが,働き方の全面的なシフトや,テレワークやバーチャルイベントがデフォルトになることを期待してはいけない。我々はまだ,この状況が業界の機能能力に与える影響を適切に測定してはいない。 ―10年ほど前からやっているような気もするが,まだ数か月しか経っていないのだ― その感覚だけでも,実際のオフィス環境や同僚との人的接触がどれほどの意味を持つのかを物語っているのではないだろうか。スタジオやチームがどれだけ効果的に仕事をしているかを完全に評価することはまだできないのだ。

 さらに,新しい種類の仕事の可能性を謳っている人の中には,この新しい状況が理想とは程遠い状況にある人もいるだろう。結局,たとえ未来がかなり身近なものに見えてしまったとしても,驚きすぎるのも,がっかりしすぎるのもよくない。

※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら



著者: “jp.gamesindustry.biz編集部 — jp.gamesindustry.biz

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